第1話:怪我をした白鳥の保護
例年よりも積雪が早い冬。
森林保護官の青年は、新雪を踏みながら森の見回りをしていた。
彼の名は
日本人の名前だが、その顔は彫りが深く、目鼻立ちがハッキリしている。
髪は明るい栗色で、瞳は深い緑色。
彼はおそらく、純血の日本人ではない。
日本人の母親に育てられた私生児で、父親が誰か教えてもらえないまま母を亡くしていた。
雪が音を吸収する静かな森の中。
風人は不穏な匂いに気付いた。
(血の匂い? 怪我をした動物がいるのか?)
怪我をした動物がいるなら、保護して治療しないといけない。
匂いがする方へ進んでいくと、白い雪の上に紅いものが見えてきた。
(白鳥? 何故こんなところに?)
それは、オオハクチョウと思われる大きな白い鳥。
純白の身体のあちこちに血が滲んでいた。
水辺にいる鳥が何故森の中に倒れているのか?
風人は白鳥に歩み寄り、手袋をはずして身体に触れてみた。
(温かい。生きてる……?)
温もりを感じるとともに白鳥が僅かに身動きしたので、生命力がまだ残っているのが分かる。
風人は背負っているリュックから動物保護用のブランケットを取り出すと、白鳥をそっと包んで抱き上げた。
(助かるといいけど……)
風人はそう思いつつ、白鳥を抱いて管理小屋へと帰っていった。
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