(6)提案の条件
カティアが勢いよく話し始める。俺の一撃で見つかった赤黒い鉱石が七種類の鉱石に反応すること、飾ってあるミスリルを使いたいこと――まあ、言いたい放題だ。
話を聞き終えたアイゼン部長は、顔をしかめて冷たく言い放った。
「却下だ。」
「ええぇー、部長、ノリ悪いっすねえ!」
カティアは全然引かない。
「冷静に考えろ。その鉱石がミスリルを吸収するというなら、研究室の象徴が丸ごと消えるということだ。」
「でもその代わり、研究成果が残るんですよ!」
「相変わらず軽いな、お前の口は…」
アイゼン部長はため息をつき、さらに冷たい声を続けた。
「そもそも私は、魔法学院との共同研究そのものが気に入らんのだ。」
その言葉にアルマを向ける視線が一段と鋭くなる。
「永久凍土の中で研究に命を懸ける我々と、一年中好き放題に魔法を学び、春は縁結び、秋は学院祭と遊び呆ける魔法学院の者たち――何故そんな連中と研究を共にせねばならん?」
ムカつく。俺の母校をよくもコケにしてくれたな――俺が前に出ようとした瞬間、アルマが先に動いた。
「今の言葉、撤回してください。」
まっすぐな声が室内に響く。
「ほぉ、威勢がいいな。」
アイゼン部長の目が細くなる。
「胸の星バッジは一つ…一年生か。上級生に口答えとはいい度胸だ。」
「私は魔法学院に誇りを持っています。そのすべての取り組みに意義があり、意味があります。それを知らない人に否定される筋合いはありません。」
堂々としたアルマの姿に、俺も思わず見入る。
「言うではないか。」
アイゼン部長が少し興味を示すように言う。
「だが、どうせその学びもくだらない使い方しかしていないのだろう。我々がこの大地で命を懸けているのとは違う。」
(この野郎、よくも言ってくれる…)
俺が口を開きかけたその瞬間、アルマがさらに一歩前に進んだ。
「魔術学院にも模擬戦がありますよね?もし私が一年生の初級魔法で、あなたの三年生の上級魔法を超えるようなことがあれば、その言葉を撤回していただけますか?」
静寂が訪れる。そして――
「模擬戦、受けてやろう。」
アイゼン部長の口元に薄い笑みが浮かぶ。
「北国の夏はお前たちの国でいうところの春だ。裏庭に出ろ。草が芽吹いた緑の絨毯の上に、お前を膝まづかせてやる。」
アイゼン部長の口元に薄い笑みが浮かぶ。
「えええ!ちょっと待ってくださいよ!穏便にいきましょうよー!」
カティアが声を上げるが、もう誰も聞いちゃいない。
俺たちは無言で部屋を出て、模擬戦の場に向かった。
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