第1章①
僕の生きるこの世界は、文字通りの地獄だった。
禍異獣と総称される異次元からの化物共の出現で、都市は破壊され、人々は蹂躙された。
禍異獣は様々な形態で、あらゆる地形から襲来してくる。地上は言うに及ばず、海上、海中、上空。
逃げる場所など皆無だ。
誰もがこの現実に絶望した。
人類文明はこの正体不明の存在によって、まさに終止符を打たれようとしているのだ。
僕達はもうダメだ。そう観念した。
ところがある日を境に禍異獣は姿を現さなくなった。
人類は突然絶望の淵から脱したのだ。大多数が歓喜した。懐疑的な人達もいた。これで終わりではないのではと。
しかし、禍異獣が現れずに5年の月日が経った。
その間に人類社会は復興し、以前の落ち着きをすっかり取り戻していた。
もう地獄は去ったのだと。
だが、その裏には脆くて恐ろしい事実があったのである。
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