第12話:放課後

放課後になると高橋くんが一緒に帰ろうと誘って来たので甘んじて受ける。


「駅前のどこか寄るか、遊びにでもいく? 普段、棟田くんは学校帰りにゲーセンへよく行ってそうなイメージがあるけど」


正門を過ぎたあたりで高橋くんがまたまた気を利かせてくる。


「ん〜、ゲームにはハマってはいるけれど、

主にパソコンかスマホのゲームがほとんどで、あまりゲーセンは行ってないんだよね」


「そうなんだ? 意外かも」


「ゲーセンも楽しいだろうけど、ああいう場所って中には騒がしい連中も多いから」


ゲーセンなんだから、楽しく騒がしいのは当然と言えば当然なのかもしれないけれど、

陽キャなノリとでもいうのか、耳障りなテンションの声もたまに聞こえてくるのが、僕は苦手だった。


「確かに。自分の好きな空間で好きなことしてたいもんね」


「そそ。それにハマると金もかかる」


「だよね、早く社会人になって自分が稼いだお金で好きな物を好きなだけ買いたいよ」


高橋くんが大人になったらきっと図書館や満喫なみにラノベの蔵書を増やしそうだなと想像して笑えてきてしまう。


「高橋くんはバイトしてないの?」


「親から小遣い多めにもらってるからバイトはさせてもらえてないんだ。棟田くんは?」


「コンビニでしてるかな。と言っても、学校終わりは週一であとは土日のどっちかだけ」


この話、御堂にもこの前したばっかだよなとデジャブを感じる。


「週2回くらいだとあんまり稼げないね」


「そうなんだよなぁ〜。もっと入って稼げれば、課金も出来るかもなのに」


僕は魅惑の林檎マークのギフトカードを頭にうかべる。


「課金かあ、それこそ沼じゃない?」


「確かに。一度課金しちゃったら、その後もずっと課金してめちゃくちゃ沼りそう」


おそらく高橋くんも、そういうタイプなんだろう。僕たちは好きなこと、ハマっていることに一度集中してしまうと際限なく沼ってしまう性格のようだ。林檎マークのギフトカードは魅力的すぎるけれど、現状維持で使えないままの方が良いのかもしれない。


ブブブ、ブブブ…。


制服の内ポケットに入れていたスマホが震えている。母親か? それともバイト先か?


「ごめん、ちょっとスマホ確認する」


高橋くんに一言断りを入れてから、スマホを取り出して通知を確認すると、御堂からのメッセージが届いていた。高橋くんに気付かれないようにライソを開く。


『女優って!

そんな大それたこと思いつきもしなかった。

いま病院終わりで帰るとこだよ〜。

そっちは? まだ教室でゲーム? それとも電車乗った感じ?』


『いや、駅に向かってるとこ』


『そっか思ったより早く帰るんだね、もしかして今日はバイト?』


『違うよ? 普通に家に帰る』


あまりに御堂とのライソのヤリトリに集中し過ぎると、高橋くんに勘づかれそうで不安になったので、内ポケットにスマホを戻す。


「急用?」


「ううん、母親からだったよ。帰りにスーパーに寄って買って来て欲しいものがあるって指令を受けてたとこ。ごめん今日は寄り道出来ないや」


「指令って言い方! 棟田くんらしいや」


どうやら上手く誤魔化せたようだ。その後も、内ポケットのスマホが何度か鳴っていたが、どうせ母親から追加の指令でしょ、電車の中で見るよ、と言って駅へと向かった。



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