第2話 強化指定選手
「そうか、強化指定を受ける気になったか。」
ダルマ先生は満足そうに頷いた。放課後の部活動の前に美月はダルマにバトミントンの強化指定選手受託の意向をハッキリと伝えた。よくよく考えての決断だった。
「はい。どこまでやれるか分かりませんが、一生懸命やります。ですが・・・・。」
「?。なんだ?どうした?」
「どうして私なんでしょうか?私より上手い人は他にいるのに・・・・・。」
「誰だ?」
「3年の白石先輩とか・・・・。」
美月は遠慮がちに答えた。
「この前の大会では、山下の方が白石より成績は上だったじゃないか。」
「それは偶々なんじゃ・・・・。相手との組み合わせとかが、私にとって有利だっただけで・・・・・。」
謙遜する美月にダルマ先生は温かい眼差しを向けた。
「そうだな。確かにツイていた側面はあったのは事実だ。だが、強化指定は成績だけで選ばれる訳ではないんだ。その他の要素も大きく加味される。」
「その他の要素?」
「例えば将来性とか人間性とかだな。」
「・・・・・・。白石先輩は県内で名の知られた方です。私はこの前の大会で偶々、4位に入っただけの無名の選手ですよ。」
「・・・・・・・。」
ダルマ先生は黙って聞いている。美月は白石の擁護を続けた。
「この中学のバトミントン部が強豪でいられるのも白石さんが居られるからで、人望もあります。それなのに白石さんを差し置いて、私なんかが良いのかなって・・・・・。」
ダルマは美月の表情を窺いながら、ズバリと言った。
「山下は、白石の事が怖いのか?」
「えっ・・・・・。」
言葉に詰まる美月。本心を言い当てられたからだ。
「・・・・・確かに、白石は良い選手だ。バトミントン協会からは山下ではなく、白石を強化指定選手にと。当初はそういう話だった。」
美月は驚いた。そのような事実は初耳だったからだ。
「だったら、なんで私が強化指定に?」
「私が白石では無く、山下の事を推薦したからだ。」
山下美月の帰還 軽部雄二 @mai-kuraki
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