第2部 三体合流~鮮血と明朗~

第八話『早い!! 茶店close』

 茶店サテンマゼンタ針葉樹モミの森123号店。


 ここは、いにしえの純喫茶である。

 

 喫煙可。


 白いサテン生地の風呂敷包ふろしきづつみが、子供たちへのプレゼントがたくさん詰め込まれることで、巨大な艶々ツヤツヤの玉となり、店内のそこいらに転がっている。


 数十分前、三角Δロースサンタ・デルタΔフォースVSバーサス大魔神サタン&赤い悪魔レッド・アクーマーの激しい戦闘に揉みくちゃにされたが、中身は無事なようだ。


 多くの男が憧れるような歳のとり方をした、渋いオジサマのマスターが、キュッキュッ、と、布巾クロスでグラスをく。


 高さのあるカウンター席に座るミニスカー・サンタとサンタク・サンタ。

 紅白の宇宙服サンタコスモ・スーツは着崩され、付けひげ──という名の呼吸用マスク──もはずされている。赤い三角帽子サンタ・ハットは、かたくなに、あるべきところにとどまっている。


 ひと暴れして休憩中、というわけだ。



~♪ M◯NSTER的カッチョいい曲(前奏) ♪~



\ジューニジーヲスーコシスギルコーロ/

 フィンランド宇宙軍専用携帯端末〈三太流電話サンダルフォン〉が鳴った。


 ちなみに現在時刻は……


 12時を少し過ぎる頃0時12分である。


\ピッ♪/


「はい、MOSMOSもすもすX'masクリスマスぅ? はい………………はい…………はぁ。あー、はい。ウス(オネエ口調忘れ)」

 電話に出たミニスカー・サンタの表情は、あまり嬉しそう、という感じではない。


大元帥だいげんすい、なんだって?」

 サンタク・サンタが、恐る恐る、問う。


「もォッ、こんな短時間に緊急発進スクランブル二回目だってェ? 正気の沙汰さたじゃないわァン! それも、あいつが……帰ってきたって」

 ミニスカー・サンタはそう嘆きながら、グラスにちょこっと残されていたビールをクッと飲み干す。


「マジかよッ! まさか、あいつが……な。その上……トマト汁入りビールレッドアイじゃない。なァんでトマトジュースがないんだよッ! マスター!! 普通のビールスーパ◯ドライとかを飲むのは、破壊王の三太サンタ・オブ・ブレイキングくらいなんだッ! 俺たちはそんなの飲んだら、すぐ酔っ払っちまう! 飲酒運転不可避ッ! 雪車ソリってのは『車』って字が入っているだろう? そういうことだよッ!(※フィンランドのオトコは漢字が読めるらしい、知らんけど)」

 キレ気味の、サンタク・サンタ。


「んなもん仕方ないだろう? ウチは酒場というよりも茶店サテンなんだ。だから酒の在庫は少ない。しかも閉店後のこんな時間に無理やり開けさせられたんだぜ? ワシの身にもなってみろっつーの!」

 マスターも、ちょっぴりイライラしている。


「深夜12時閉店は早いって! 俺たちのために24時間やってくれッ! あ、というか12時過ぎたのか? なら、12月24日の日没から、12月25日の深夜0:00までの時間、すなわちクリスマス・は、終わった。ここから12月25日の日没までは、だッ」

 思わず的思考がにじみ出るサンタク・サンタ。


「ちょっとォ、サンタク・サンタったら、ややこしいこと言わないデェ? 頭がこんがらがっちゃうわァン!」

 舌が絡まるミニスカー・サンタ。


「ミニスカー・サンタ、こんがらがり過ぎだろ……このドジっ子めッ」

 サンタク・サンタは、ドン引き。


「それでよ、お前たちのいない間に、えらく顔色の悪い、背に翼の生えた変なハエみたいな集団が来たんだが、トマト汁入りビールレッドアイをこれでもかって量、持って行っちまったよ。つまりは、トマトジュースの買い占めだ。ていうかあいつら何だったんだ、コスプレか? ハロウィンはとっくに終わったのにな」


「そうなのェ、わかったわァン。なら、アタイら、行ってくるわネェ……」

「しゃーなし、行くとするか……」


 三角Δロースサンタ・デルタΔフォースの二人は、ダラダラと、ではなく、足の震えからくるゆっくりとした歩みで、緊急発進スクランブルした。


 

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