きみは「文学フリマ」を知っているかい?

あかつき らいる

憧れのイベントへ出展した時の話 -1-

 憧れのイベント「文学フリマ 福岡」へ出展した時の話。文学フリマの話は関東と関西しかないと聞いていた。その後、九州でも開催決定というニュースに私は嬉しくなった。福岡県での開催、と聞き、ますます同人活動に没頭していった。


 福岡の人は、いや、九州各地、または全国各地からいろいろな人が集まる同人誌即売会。しかも、ジャンルはアニメや漫画ではない。「自分が文学と信じるもの」をイベントでは頒布できるという。そう、参加規約ルールには書いてあった。「自分が信じる文学」であれば、という所に希望を見出して、私は出展を決めた。


 まず出展名を決めなくてはならない。いわゆるサークル名や屋号のことだ。漠然としたまま、私は知人の屋号に対抗するべく「まちかど」に「出版社」があったら面白そうだ、ということでサークル名を付けた。その場のノリと言うか、ひらめきだった。


 まず、詩集を作った。アンソロジー本といって、数人の仲間と協力して、作品集を出す。アンソロジー本を3号まで作り、イベントへ臨んだ。結果的にあまり売れなかった。知名度がなかったのだ。作品も純度が低くて高品質ではない、と言う酷評をもらった。文学フリマ福岡へは、数回、出展している。なかなか交流ができない。人見知りもある。そこで考えた。


「誰でもできそうではあるが、めったに目を向けない分野で勝負をしようじゃないか」と。


 同人誌は晴眼者せいがんしゃのものだけではないのだ。晴眼者、つまり目が見える人たちだけの世界ではないはず、という考えに至り、私は、言葉を変えてみた。同じ日本語だけど、日本語だと認識されにくい「点字」の読本どくほんに同人誌を当ててみたらどうだろう、と考えた。閃いてしまった。そして思いついた。


 思いついたからには、実際に作ってみるしかない。こうして、点字の同人誌がうまれた。

 これがウケた。文学フリマでも注目され、他の同人誌即売会「福岡ポエイチ」や「ちょこ文 福岡」でも固定のファンがついた。一時期、その固定ファンの為だけに発行していたぐらいだ。現在は休刊している。


 文学フリマ福岡の会場で、固定ファンが連れてきた人たちからも大好評で、毎回、完売だった。もともと、各号10部しか作らない。新刊を待ち望んでくれていた。「楽しみにしていたんよ」と聞くと嬉しくなった。


 また、ある時などは「この同人誌を使って点字の勉強をしている人が増えたんだよ。ありがとう」とも言われた。作って良かった、そう思った。

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