第6話

ガラガラっ。


部屋に入って来たのは


背が高くスーツを着こなした


容姿のいい男だった。


チラッと俺を見ただけで、


何も言わず、俺の上司に向き合う。


「これはいったいどう言う事ですか?」


「何がかな、新庄くん。君の考えを汲んで契約を取れるように指導していただけじゃないか。」


悪びれもせずに言う男。


「俺はこんな事させる為に取った訳じゃありません。こんな事になるなら、出張にも行かなかった。関さんが任せて良いとおっしゃるから

そうしただけだ。」


俺には理解が追いつかなかった。

俺を採用したのは新庄と呼ばれるこの人だったのか?

何故こんなにも辛そうな顔をしているんだろう


そう思いながら成り行きを見守る。



「それは、それは悪い事をした。最近は壊れてしまって遊び飽きて来たところだったんだ。

ちょうど良いね。後は君に任せるよ。」


そう言って関と呼ばれた男は部屋を出て行った。


それから、新庄さんは俺達の方に向き直り


俺以外の人に声をかける。


「すみませんが、これで終わりです。

表に車を呼んでいますので、お引き取り願います。今後、このような取引はしまさんのでそのつもりで。今日はお時間頂きありがとうございました。」


と新庄さんが言うと、他の人達も渋々出て行った。


2人きりになり、あたりはシーンとしている。


新庄さんは近付いて来て自分の上着を脱ぎ俺の肩にかけてくれた。


「すまない。きつい思いをさせた。」


謝ってくれたのに


腹が立つと同時に泣きたくなる。


どうしてもっと早く、、、


どうしてこんな目に、、、


どうして俺だったんですか、、、?

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