神社に居たサンタ

大鐘寛見

神社に居たサンタ

人生で1番気味が悪かったクリスマスの話。


カレンダーで見ていただけると分かると思うのですが、去年は24日が日曜日で25日が月曜日でした。

僕は大学生で25日のクリスマス当日に1コマ目から講義があり、実験もありました。

そのため、24日のクリスマスイブに当時付き合っていた彼女とデートをしました。

当時の僕は非常に金欠でして、二駅離れたところにある彼女の家でお家デートをしました。

晩御飯とケーキを2人で食べて日付が変わる前には彼女の家を出ました。

今思えば、明日の朝が早くても、彼女の家に泊まっておけば良かったと後悔しています。


最寄駅から自宅までは徒歩で15分くらいの距離があります。

僕はイヤホンでクリスマスソングなんかかけたりして、幸せな気持ちで家までの道のりを歩いていました。

しかし、ここでイレギュラーが一つ起こりました。

道路の工事で朝は通れた道が通れなくなっていました。

自宅までの道の最短経路の道だったので、ここが通れないとなると、左右どちらかに回り道する必要がありました。

僕は、自宅までどちらかと言えば左から帰った方が近いということもあり、左から回り道をすることにして、また歩き始めました。

そして回り道をして、また同じ道路沿いに突き当たったのですが、そこもまた工事で通行止めでした。

ここで一つ新たな問題が起こりました。

この道が通れなかった場合、これ以上左に進むと神社の中を通らなければ僕が渡りたい道路に出ることが出来ないのです。

正直、時間もちょうど日付が変わったくらいでかなり怖かったので、大人しく引き返して右から回り道をすれば良かったのですが、デートの帰りでかなり幸せな気分だったことと、何度も通行止めに行手を阻まれて若干イライラしていたこともあって、そのまま神社の中を通って帰ることにしました。

小さい神社の中を歩くと、ジャリジャリと足音が立ち、それがまた僕の恐怖心を煽りました。

その度に、僕は心の中で「流石にクリスマスに丑の刻参り的なのはないだろう。」と自分を落ち着かせていました。

そんな時でした。

少し説明が難しいのですが、位置関係的には神社には三つの出入り口があり、僕が入ってきたところとそこから左に進んだところに一つと真っ直ぐ進んだところに一つあります。

僕が通りたいのは、僕が入ってきたところから真っ直ぐ進んだところにある出入り口で、この出入り口は他二つに比べてかなり細い道になっていました。(おそらく正規の道ではないのでしょう。)

そんな細い道の脇にボロボロの赤い服?のようなものをきたお爺さんが立っていたんです。

例えるなら、全身古着のサンタといった感じです。

見つけた瞬間はかなりビビりましたが、少し経つと単純にちょっと変な人なのかな?と思っていました。

よく見ると足元にダンボールが敷いてあって、恐らくホームレスの方だろうと結論づけて、刺激しない様になるべく視界に入れずに通ろうとしました。

今考えると、冬に、しかも神社で寝泊まりしていて、僕が通る時に立っているなんて色々とおかしなことだらけなんですが。


僕はそーっとそのお爺さんの傍を通り過ぎようとしました。

その時お爺さんに肩を掴まれました。

僕が驚いて顔を向けると何かボソボソと喋っているようでした。

僕はイヤホンを外して「な、何ですか?」と狼狽えながら聞き返しました。

お爺さんはボソボソとした声で「...メリークリスマス、プレゼントやるわ。」と言って足元にあった赤い箱(ちょうど手のひらサイズくらい。)を僕に手渡しました。

人はあまりにも理解不能なことが起こると、意外と怖くないと言うか、冷静なもので、僕はすんなり箱を受け取り、「ありがとうございます。メリークリスマス。」とお爺さんに言って別れました。

お爺さんはニコリ、と言うよりはニヤリと言った風な笑顔を僕に向けました。


しばらく何も考えずに歩いていて、ふと意識が戻ってくると急にとてつもない恐怖が襲ってきて、走って自宅に帰りました。

そして玄関の扉を回そうとしてノブを握った時に気がついたんです。

右手でプレゼントの箱を持っていて、その箱を左手に持ち替えて、右手でノブを握りました。

そのとき右手がヌメヌメと滑りました。

手のひらを確認すると赤い液体、と言ったら意味深ですけど、恐らく何かの血がついていました。

僕はすぐにあのお爺さんから貰った箱を開けて確認しました。

中にはグチョグチョとした肉片?のようなものが入っていました。

どうやらその肉片についていた血が箱から染み出してきていた様です。

箱はよく見るともともと白い紙で出来ていて、血で赤くなっていた様でした。

僕は気味が悪く思い、その辺の道端に箱ごと投げ捨てて家に入りました。


その日以来、あの神社には気持ち悪くて行っていません。

あのお爺さんは何者で、あの肉は何だったのか、は友人や家族に話しても誰も知りませんでした。

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神社に居たサンタ 大鐘寛見 @oogane_hiromi

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