クリスマスには寝取られを!

スイーツ阿修羅

【誘拐】


 私の部屋に、サンタクロースが来た。

 カツ、カツ、カツ

 と、大理石のフローリングをブーツが叩く。

 足音は着実に、私のベッドへと迫ってくる。


 私はドキドキしながら、寝たふりのままで、チラリと目だけをそちらに向けた。

 暗くてあまり見えないけれど、その人物の背中には、確かに大きな袋があった。


 彼は、私の枕もとに近づき、何やらガサガサと物音を立てた。

 く、くる……

 枕元のベッドに下げた赤色のブーツ。

 今年は一体、どんなプレゼントが貰えるのか?


 去年のプレゼントは、雪の結晶みたく精巧で真っ白なワンピースだった。

 一昨年は、たしか真珠色のブレスレットだった。


 私のワクワクは、これ以上ないほど膨れ上がっていた。


 サンタさんの手には、キラリと光るものが握られていた。


「動かないで、殺されたくないなら、何も言わずに大人しくしてて」


 私は突然、サンタさんに男の子の声で話しかけられた。


「え?」


 次の瞬間、私の体は宙を舞った。


 ガシャーン!!


 ガラスが盛大に割れる音がした。

 目をパチパチと開閉する。

 足元には雪降る夜空、

 頭の上には、クリスマスの照明で輝く、王都ペルメーユの街並みが一望できた。


「いやぁぁぁああぁ」


 私は絶叫した。

 頭から地面に落ちていく。

 どうやらサンタクロースさんは、私を抱き抱えたて窓を割り、

 お城の外へと飛び出したようだった。


「お嬢様ぁぁあぁぁ!!?」


 頭の上から誰かの驚く声がした。


「し、静かにしてって言ってるだろ! 静かにしないと殺しちゃうぞ!?」


 器用に着地したサンタクロースさんは、焦った様子で私の首筋にナイフをあてがい、宮殿外壁を全力疾走していく。


 いや、サンタクロースさん、

 んなわけあるか!

 コイツはサンタクロースなんかじゃない!

 私を攫いにきた誘拐犯だ!


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