【1話完結】可愛すぎる義妹が、サンタ服で俺に抱きついてきた。

空豆 空(そらまめくう)

可愛すぎる義妹が、サンタ服で俺に抱きついてきた。

「うあーさっむ!!」


 今日は大雪。寒さにかじかんだ手で、自宅の玄関を開けた。


 すると――


「メリークリスマス!! おにーちゃん、おかえりなさーいっ」


 温かい暖気と共に玄関で出迎えてくれたのは、サンタの格好をした義妹。

 いや、サンタとは名ばかりの、サンタの格好を模した可愛いコスプレ用衣装だ。


「へ!? どした。その格好」


「どう? 可愛い? せっかくおにーちゃんと過ごすふたりきりのクリスマスだから、サンタコスしてみた♡」


 ただでさえ誰が見ても可愛い義妹のサンタコスとか、可愛いの上塗りでしかないじゃないか!!


 外は大雪だというのに、肩は出てるし、スカートは短くて、目のやり場に困る。


 と、思っていたら。


「はいっ。おにいちゃん用にも買っておいたよ。トナカイの着ぐるみ!!」


 そう言って満面の笑みの義妹に、トナカイの着ぐるみを手渡された。


……これ、断れないやつだよな。


 と思いつつ、着替えてみると……


「わーおにいちゃん。トナカイの着ぐるみ似合う―♡ 可愛い♡」


 満足そうな笑みを浮かべる義妹に抱きつかれた。


(着ぐるみが似合うってなんだよ。こんなの誰が着ても同じだろうが!! だがしかし、外はトナカイでも中身は俺なんだよ。おまえが抱きついてるのは、俺なんだよ!!)


 つい、そんなことを心の中で叫んでしまう。なのに。


「中身がおにいちゃんだと思うと、さらに可愛い♡ 」


 中身俺だと分かってて抱きついてるなら、もうこれ重症じゃないか。


 可愛いってなんだよ、やっぱり俺、男として見られてないじゃないか。


 とは言え所詮、家庭用の着ぐるみ。義妹が俺の胸元に頬擦りしているのが分かる。


 ああ、もう。俺はちゃんときょうだいとして接していきたいと思っているのに、最近できた義妹の愛情表現が激しすぎて、ふと境界線が分からなくなる。


「⚪︎▲、◻︎<>?」


「え? なあに? おにいちゃん」


 けれど頭の被り物をしたままじゃ、俺が話す声は聞き取れないらしい。


『こら、離れて?』


 そう言ったつもりだった。けれど。


 話をしようと頭の被り物を外した瞬間、俺に抱きつく義妹の声が聞こえて言葉を噤んだ。


「今年のクリスマスはおにいちゃんと過ごせて幸せだなー。トナカイの格好してる時くらい……抱きつくの許してよ。……おにいちゃんが私を女の子として見てないのは、分かってるんだからさ」


 独り言のようにそんなことを言われて。ドキンと一気に全身に血が巡る感覚がする。


 ……義妹の愛情表現は、きょうだいとしてじゃなかった!?


 急に巡る考えに、俺はどうしたらいいのか分からない。


 ただただ。外はあんなに寒かったのに、部屋の中はすごく……暑い。


 けれど俺がこれを脱いだら……俺は義妹とどう接したらいいのか分からなくて。


 俺はまだ、トナカイのまま、義妹に抱きつかれているのだった——




—— 可愛すぎる義妹が、サンタ服で俺に抱きついてきた。(完)


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読んでくださりありがとうございました。

クリスマスだーと思って、今書いてるものの合間にふと突発的にノープランで書いてみました。


お楽しみいただけていたら嬉しいです。


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