硬いローストビーフに大きいクリスマスケーキ

咲春藤華

あいつらやりやがった


 12月24日。そう、クリスマス・イブ。

 ほとんどの人が待ちに待った日、だと思う。俺だったそうだった。


 今年は彼女がおらず、腐れ縁の高校弓道部のころからの仲間4人で遊ぶ予定だった。24日のお昼から25日の夜まで。遊び明かす予定だった。俺はそう思ってた。

 

 去年・一昨年を振り返る。

 彼女のために遊園地のチケット予約したり、良いディナーを探したり、引かれないようなプレゼントを用意したり、夜景がきれいな場所に行ったり、人気な部屋が埋まる前にホテルの部屋を予約したり。

 彼女に嫌われないように、元カノからの経験を使って嫌われないように、そして楽しんでもらえるように、矮小な脳を使って考えた。

 彼女は終始笑顔で綺麗な笑い声をあげてくれた。

 プレゼントのお返しをくれた。

 可愛い声を聴かせてくれた。

 最後に『また来年』って言ってくれた。


 疲れた。

 なんか、ね。

 虚無というか、賢者モードというか。

 目標を達成したら、なにか体から抜け落ちた。

 大晦日、初詣。正直何をしたか、何を話したか、いまいち思い出せない。写真を見ても何も、、、


 それからなんやかんやあって別れた。

 振られたのか、振ったのか、それも覚えていない。


 うん、楽しくない。

 予定を決めるのは楽しかった。どんな笑顔を見せてくれるのか、どんな笑い声を聞かせてくれるのか、どんな、どんなどんなどんな。どんな?


 よし、前と同じように男友達でバカしよう。

 脳死で会話するのはなんか楽しかった。

 わいわいするのは楽しかった。

 高校の話で盛り上がるのは楽しかった。

 過去の栄光に縋るのはむなしかったが胸を張れた。

 夜の街に抜け出して、近くの公園でドンチャカチャ。

 計画なしのあの頃が。


 よし、そうと決まれば連絡だ。

 早速いつものメンバー3人と予定があった。

 することは現地についてから。

 無計画で突発的に。



 そして今日。


 集合時間、待ち合わせ場所。俺一人。

 LINEを開くと3つの『ごめん』。一言が3つ。三言。


 ああああああああ!!!!

 あいつらやりやがった!!!!

 ドタキャンだクソこらあ!!!!

 どうせあいつは○○とヤるんだろうな!そしてあいつは○○○と!!からのあいつは△△△か□□のどちらかか!!

 共通の女友達がいるとこうもわかりやすい。

 性夜の6時間。電凸するか。してやるぞ!!

 

 なんて、俺はそんなことを言えない。

 同じくバレてたし、こんな感じだったと思うけど、邪魔はされなかった。

 あいつらはいいやつだから相手がいても『うん、そりゃいるよね』で自己完結。

 相手が誰かはどうでもいい。

 つらいのはこんな日に一人ボッチ。これが心にくる。

 相手がいない。


 あの二人のどちらか俺に未練持ってないかなあ。


 そう思いながら、明日に向けてのローストビーフを作ってる。

 クリスマスケーキは作った。

 赤ワインもあるよ。

 俺より。

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硬いローストビーフに大きいクリスマスケーキ 咲春藤華 @2sakiha

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