神剣鍛冶師の弟子は転生者

御峰。

第1話 レベル1の転生者

 握った手にしっかりと馴染む柄。


 その先にキラリと光る銀色の刃。


「よし……!」


 ロングソードと呼ばれている片手で使いつつも、強力な一撃の時は両手で振る事も想定しての絶妙に使いやすい刃渡り約一メートルを少し超える剣。


 そして、目の前には――――緑色の肌を持つ小さな鬼ことゴブリンが三体。


 異世界に転生して十五年。


 魔物を目の前にするのは初めてだが……やはり、恐ろしさを感じる。


 それでも自分が作った剣を信じ、立ち向かおう。


「シャアアアアア!」


 ゴブリンが雄叫びを上げながら俺に向かって一斉に飛びついてくる。


 前世でも猿は速いと聞いていたけど、その比にならないくらいに速い。


 だが――――俺も今では異世界人なんでな!


 飛びついて来た一体目のゴブリンの喉を狙って、ロングソードを振り回す。




 ――――シュッ。




 まるで鋭い包丁で豆腐を切るかのような切れ味で、ゴブリンの首が刎ねた。


「自分で……使ったとはいえ! っ!」


 仲間が倒されたと言うのに顔色一つ変えずに突っ込んできた二体目のゴブリンを薙ぎ払う。


 てか顔が緑だし、元から顔色悪そうだもんな。


「中々の……!」


 三体目のゴブリンを胴体ごと斬りながら飛び込んだ。


「切れ味じゃねぇか!」


 ゴブリンの気味の悪い緑色の血が少しだけ付着したロングソードを、シュッと切り払うと刀身がまた綺麗になった。


 それにしても異世界の剣というのは凄まじい切れ味だな。前世なら刀匠と呼ばれる人ですらこんな剣は作れないぞ。


 まあ、それにはちょっとした理由がある。


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【鉄のロングソード】

強化:3/10

・攻撃力小上昇

・耐久力極小上昇

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 鉄のロングソード自体は前世で作れそうなくらい何ら変哲もない鉄で作られたただの剣だ。


 ただ、それを鍛冶スキルで強化することができて、失敗すると折れてしまうが、成功した時にはそれに見合った効果を持つ。


 強化は全部で十段階あって、俺が持つロングソードは三回成功したことを指す。


 付与できる内容は完全ランダムで俺の裁量で決めることはできない。


 このロングソードは一段階目で【攻撃力極小上昇】が付き、二段階目で【耐久極小上昇】が付き、三段階目で【攻撃力極小上昇】が【攻撃力小上昇】に進化した。


 ちなみに、上昇段階は極小、小、中、大、特大の五段階があり、それ以上になると壮大な名前になるが、それはまた今度。


 攻撃力だなんてゲームっぽいなと思ってたけど、切れ味がよくなるイメージで、【攻撃力小上昇】でも本来ならゴブリンの骨を断つのも難しい剣が、豆腐みたいに切れるようになるんだから、付与がいかに強いかよくわかるよな。


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ゴブリン討伐により経験値10を獲得。

ゴブリン討伐により経験値10を獲得。

ゴブリン討伐により経験値10を獲得。

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 これもちょっとゲームっぽいけど、何とか人生初めての経験値を獲得できたみたいで良かった。


 さて、俺がいるのはミグラル王国という国の東にある森だ。


 ここら辺はわりと平和で強い魔物はそう出てこないから、いわゆる初心者御用達って感じだ。


 俺みたいなレベル1はここら辺からレベリングが定石っぽいから、少し遠かったけど最後の旅銀をはたいてここまで来た。


 まぁ、来たのは正解かな。手加減して作った鉄のロングソードでも楽に勝てるっぽいし。


 次の目標のために、ここでひたすら魔物を狩っていくか。


 それにしても……。


 目の前に倒れているゴブリンの亡骸を見て溜息が出た。


「はあ……討伐実績に右耳……いやだなぁ……」


 ロングソードを地面に刺して、鉄のナイフを取り出してゴブリンどもの右耳を切っていく。


 前世ではただのサラリーマンだった俺だし、料理とかも不得意だったから加工される前の肉を切った経験なんてないからな……もしかしてその手のお仕事されてた方々も初めてはこんな気持ちだったのかな?


 不満と言っても仕方がないのでゴブリンの右耳三つをリュックに詰めて、また歩き出した。


 森とはいえ木がポツポツとした生えてないから、とちらかというと林な感じがするけど、ここら辺では立派な森らしい。


 異世界不思議の一つに木が成長するスピードが異常に速い。そして、花粉もない。これが一番嬉しいまであるよな。


 そんな森は、見渡すことが簡単なため慎重に進みながら遠くに見えたゴブリンをまた倒し始める。


 初日とはいえ、自分が使うために自分で使った剣だからか、とても手に馴染んでて苦労することなくゴブリンを三十体程倒した。


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【グレン・トリエンガム】のレベルが2に上がった。

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 やっぱりレベルもウィンドウ表記になるんだな。


 この世界はこうして魔物を倒して経験値を稼ぎ、レベルが上がる仕組みだ。


 それ以外にもスキルというのがあり、それらはたくさん使えば使う程に熟練度というのが上がり、一定値になると進化したりするが、スキルの話はまた今度にしておこう。


 ひとまず、人生初のレベルアップに喜びながら、何が変わったかいろいろ確認をしてみないとな。


 再度歩きだして見つけたゴブリン三体の群れに、迷うことなく攻撃を仕掛けた。


 三十体も戦ったという経験もあるだろうけど……レベルが1から2に上がっただけでも身体能力が如実に出るものだな。


 三体のゴブリンが俺の手によってあっという間に倒された。

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