黒髪のホムンクルス
「……あなた」
「……いえ、考え事に耽っていました。拙には、クリスマス……聖なる日と言うのは遠い存在に感じてしまえて」
「博士に作られた、猛毒の皮膚。触れるもの全てを冒し壊す私に、神の子は何か齎して下さるだろうか。いや、もう齎してくれなくても構わない。あなたという想い人が出来ただけ、拙にとっては幸せに過ぎる。だから怖いのは、齎してくれなかった時よりも、神の子の怒りに触れた時。あなたに何か悪いことが起きるのではないか、という不安だ」
「確かに、拙は無神論者です。ですが時折考えてしまう。猛毒の体を持つ私には、今の状況は過ぎた幸せなのではないかと。これよりこのしわ寄せが、あなたを巻き込む形で降り掛かって来るのではないかと。不要な程に不安になってしまうのです」
「あなた。拙は、あなたといるだけで幸せです。あなたと同じ場所で、同じ時間を過ごせる。それだけで、幸せで満たされるのです。拙はあなたを想い、愛しています。だからどうか、あなたを想う証として、神の子にも認められるようにと祈りを籠めて作りました。受け取って、頂けますか?」
「マフラーです。拙の手編み……も、もちろん、毒が染み込まないよう努力はしました! 巻いても平気なはずです! ただ、獣の類を寄せ付けぬ程度には、付着しているかもしれません……災厄や災禍からは守れないけれど、動物や人、小さな
「だから、あなたは安心して下さい。例えこの身が朽ちようと、拙があなたを守ります。もしも拙が倒れても、そのマフラーが守ってくれるはず。聖なる夜に、神の子に、拙はあなたの幸せを願い続けます」
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