第2話 天才不良君
「いやぁ,榎煉本当にありがとう。」
テストが返された日の放課後。私と榎煉は保健室にいた。
「うん。」
なぜ保健室にいるのか,それは数時間前に遡る。
私と榎煉,そしてほかの人が中庭で休み時間を過ごしていた時。
「あれぇ,榎煉君じゃないですか???」
中庭の門に如何にも強そうな高校生…?が2人いた。榎煉の知り合いなのだろうか。ほかの生徒もその高校生に目をやっていた。
「芽依,ちょっと今からのこと目つむってて。」
「え。」
高校生が門を乗り越え,榎煉の方に向かってくる。先生を呼ぼうとしたがあいにく先生たちは会議中だ。
「うっ…。」
目を離したとき,高校生が榎煉を殴った。…いやいや噓でしょ!?どういう関係なのよ!
「きゃぁぁ!!!」
榎煉の周りが血であふれ,辺りは騒然と化していた。
「今はやりたくねぇんだよ!帰れ!」
榎煉の目つきが虎のようになる。みんなはすぐに逃げたが,私は怖くて足が動かなかった。幸い,私の前には草木がある。そこに隠れれば…
「お嬢ちゃん,何見てるの?」
「!」
高校生の一人は私に向かってくる。ど,どうしたらよろしいでしょうか。と思って目をつむったとき,鈍い音が聞こえた。
「早く逃げろ。巻き込みたくねぇから。」
目を開けると大の字に倒れている高校生とかなり血だらけの榎煉がいた。
「お前ら不法侵入だぞー!!!」
先生たちがようやくやってきた。その後,私たちは下校という形になったが,榎煉は事情聴取されていた。
「…ってぇ。」
「馬鹿。というかあれ誰なのよ。」
というわけで今,保健室にいる。
「俺があいつらの手下ぼこぼこにしたらついてきやがったんだよ。…いてぇって。」
「いやいや…ぼこぼこにした榎煉が悪いでしょ。」
「仕方ねぇ,喧嘩ぶっかけてきたあいつらが悪い。…っぁぁぁ。」
悲鳴を上げる榎煉に容赦なく消毒液をかける先生が怖い。一番出血がひどかった頭をとうとう先生はゆすった。
「ぜってぇ殺す殺す殺す…。」
ぶつぶつ言っている榎煉をほって,私は先生に話しかけた。
「…先生は榎煉の事嫌がらないんですね。」
「え?あぁ,あたしもあんなんだったからね。まだかわいい方よ。」
まぁ,確かにこの先生,女番長みたいな感じは出ている。…絶対怒らせないでおこう。
「じゃぁ,お幸せに。」
そういわれ顔を真っ赤にした榎煉と一緒に私は家に帰った。
その後の話によれば,あの騒動を聞いた人や実際に見た人の間では榎煉を『天才不良』といい,そのあだ名が流通しているようだ。
すみません…あの不良は私の彼氏です @homura_seira
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