第2話 命運を左右する存在
「
仕事を終え館に戻ってきた
手には猫じゃらしがあり、上下左右に振られる猫じゃらしに、白は飛び上がってじゃれついている。
白は
先日の酒席で猫に夢中になった悦傑が「買ってもいいか」と欧喜に尋ねると、欧喜は微笑み、「気に入られたようでしたら差し上げます。土産ですので」と言ったので有り難く頂戴した。
猫に「白」と名付けたのは妻の
猫の色から名をつけた。
なんのひねりもないが、分かりやすくていい。
帝都から遣いにやって来た
「悦傑の家には猫という稀有なものがあるそうじゃないか。
今晩見に行ってもいいか?話のタネに」
と頼んできたので、悦傑は顔を
「なんで、お前が猫のことを知ってるんだ?」
「なんでって……帝都でももっぱらの噂だよ。
後宮の女官から姫君、奥方さまに至るまで。
天佑は笑っているが、悦傑は顔を引き攣らせて、頭を抱えた。
――これだから帝都はいやなんだ、帝都は
悦傑は思う。
片田舎で誰にも気兼ねなく気ままに、ぬくぬくと暮らすのが理想である。
帝の周りで笑顔を振りまきながら、虎視眈々と互いを蹴落とす算段をする、実のところ何を考えているか分からない人の皮を被った魑魅魍魎が跋扈する宮廷には近づきたくない。
帝都では「昨日の味方は今日の敵」だ。
遠巻きに眺めている分にはおもしろいが、自分が関わるのは御免被りたい。
まして、猫である。
万一、猫が帝に気に入られてしまったら、周囲の者は皆敵になるぐらいに思っておいてよい。
帝に気に入られたのは猫であって、悦傑ではないのに、要らぬ憶測がひとり歩きして、気づく間もなく、悦傑の命がなくなっていてもおかしくはない。
猫が悦傑の命運を左右する存在になろうとしているのだ。
「臆病なのは悦傑の悪いところだ」
天佑は人ごとだと思ってニヤニヤしている。
「能力があるヤツは能力なりの場所にあるほうがいいんだ。
下の者も仕事がやりやすくなるに決まってる」
「私にはそんな能力も人望もないがね」
悦傑が立ち上がったので、天佑も続く。
「怒ることないだろう」
「怒ってないさ。これから家に来るんだろう?
歓迎してやろうと言うんだ。有り難く思え」
悦傑の言葉が終わるのと同時に、終業の鐘が鳴った。
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