6 レプティリアを逆4D探査せよ
『時間はあるから、もう一度、昼ご飯にしようね』
ヒロは余裕だ。そう言っている間に、あたしらのコントロールポッドのコンソールが透明な防水シートで覆われ、トレイに載ったサンドイッチとコーヒーと味噌汁が現れた。
『何だ、こりゃあ!!』
ヒロシが
見ての通りだ。魂消る事は無い・・・。さっき昼飯にヒロシが作った肉入り野菜炒めを使ったサンドイッチと、トモキが焼いた鮭を使ったサンドイッチ、あたしの好みのカツサンド、そしてミルクたっぷりのコーヒーと味噌汁だ。
あたしがそう思ってるとヒロが説明する。
『転送スキップ(時空間転送)だよ。皆の言い方なら、念動力(テレキネシス)だね。
ご飯を炊いてなかったから、出現する時、皆の好みに会わせて、ちょっと手を加えたよ。 コンソールは防水シートでカバーしたよ。
でも、こぼさないでね』
ヒロはヒロシに微笑んでる。
何で、ヒロはこんな事ができるんだ?まあ、そんな事は気にしなくていい。
ヒロ、頂きまあす。
あたしはそう伝えながらカツサンドを口に入れた。
『みんな、ゆっくり、食べてね。あたしも食べるよ』
ヒロがサンドイッチを食ってる。
ええっ?ヒロはアバターだろうに?
『アバターだよ。シールドと同じに、素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドで構成したアバターだよ。だから、実体があるんだよ。
エネルギーフィールドの維持に、エネルギーが要るんだよ』
ヒロはそう言うが、サンドイッチの中身は何だろう。
『精神波の元になる物と同じじゃよ・・・』
大叔父さんは分っているみたいだ。
精神波って事は・・・。精神波は心の思考、つまり精神思考で生まれる素粒子信号で4D信号だ。4D探査(素粒子信号時空間転移伝播探査)信号と同じだ。
精神波を増強するエネルギー源か?そんなら、あたしも食ってみたいなあ・・・。
『儂らはサンドイッチを食っとるだろうに。その栄養素がナノロボットの糧になって、儂らの精神を増強しとるんじゃ。
ヒロは直接、素粒子の増強エルネギーを食っとるだけぞね。
機械に燃料や給油するみたいなもんじゃよ』
『そのエルネギーは何なの?』とヒロシ。
すぐさまヒロが答える。
『ヒッグス場のヒッグス粒子だよ~。皆が食っても、味も素っ気も無いよ~』
ヒロが笑ってる。
そんな物を何処から手に入れた??あたしは大いに疑問が湧いた。
だって、ヒッグス粒子って、ヒッグス粒子弾に関係するんだろう?さっきヒロが話してたじゃないか・・・。
『ヒッグス粒子弾はね』
ヒロが説明する。
ヒッグス粒子弾は、ヒッグス粒子が構成するヒッグス場をエネルギーマス化して投射する兵器だ。
ヒッグス粒子弾を被弾したターゲットは、構成されたヒッグス場に包囲され、ヒッグス場から構成されたダークマター亜空間へ転移してエネルギー転換し、物質が存在していた時空間から消滅する。
再エネルギー転換しても、実体が出現するのはヒッグス場から構成されたダークマターの亜空間内だ。ここから自力で時空間に戻るのは不可能だ。
ヒッグス粒子弾はプログラムによってターゲットを追って時空間スキップできる。他時空間で物質の再構成は可能だ。
大叔父さんが転送スキップ(時空間転送)に話を戻した、
『のお、ヒロ。こんな事できるんじゃったら、レプティリアの〈アスロン〉を簡単に壊滅できるだろうに?』
大叔父さんの脳裏にでっかい?が浮んでる。
『それはだめだよ。今、食べ物をスキップさせたのは、皆が精神波で作ったシールドと〈ガジェット〉が張ったシールドの内部時空間だからできたんだよ。
シールド外部に何かを転送スキップ(時空間転送)させたり、外部の何かを転送スキップ(時空間転送)させるには、ピンホール程度でも、シールドの部分解除が必要だよ。
そしたら、〈アスロン〉のレプティリアに、気づかれちゃうよ』
『シールド解除しないで転送スキップ(時空間転送)はできないのか?』
あたしは、昨日、精神波であたしらをシールドして(バリア張って)いろいろ探った時を思った。いろいろ探れたのだから、シールドしたまま外部に何かできるはずだ・・・。
『それはね。ピンホールほどのシールド間隙から探査したんだよ。相手が皆を警戒してなかったからできたんだよ。
でもね、国内の裏組織が壊滅したから、今度、奴らの裏組織は警戒してるんだよ。
ほら、探ってきてるよ』
あたしらの脳裏にレプティリアの宇宙艦〈アスロン〉が現れた。
〈アスロン〉はここ温故知新屋の真上に滞空してる。無音のステルスモードで、電磁亜空間転移伝播探査波の3D映像探査波を放って街全体をスキャンしてる。
この温故知新屋も宇宙艦〈ガジェット〉もシールド(素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドによる防御遮蔽)してるから、安心してレプティリアの〈アスロン〉を逆4D探査できると思っていると、
『ウワオッ、大変だ!』
ヒロが驚き、同時に、〈アスロン〉の3D映像探査波が、素粒子信号時空間転移伝播探査波の4D映像探査波に変った。
『〈アスロン〉のシールドは3Dシールド(電磁波多重位相反転防御エネルギーフィールドによる防御遮蔽)だけど、探査は4D映像探査(素粒子信号時空間転移伝播探査)だよ。
レプティリアは4Dシールドをピンホール程度でも解除しないと探査できないって知ってるから、〈アスロン〉を3Dシールドしてるんだよ。
4D映像探査できるって事は、防御も攻撃も、あたしらと互角だよ』
4D映像探査してる〈アスロン〉から、ヒロはレプティリアが4Dシールドや素粒子信号時空間転移伝播技術を保持してると確信してる。
『奴ら、転送スキップ(時空間転送)とスキップ(時空間移動)ができて、ヒッグス粒子弾もあるのか?』とトモキ。
『〈アスロン〉は飛行してきたんじゃなくって、ここの時空間に出現したんだよ。
だから、スキップ技術はあるよ。
転送スキップとヒッグス粒子弾はわからないけど、開発するのは時間の問題だよ』
ヒロは不安げだ。
『こっちの4Dシールドをピンホール解除して、〈アスロン〉の駆動部に小型ミサイルを転送スキップしたらどうじゃ?この〈ガジェット〉にミサイルくらいはあるじゃろ?』
やられる前にやれじゃよ・・・。大叔父さんはそう思ってる。
『〈アスロン〉を破壊したら、ここと〈ガジェット〉がバレちゃうよ。
何か良い作戦はないかなあ・・・』
ヒロは考えてる。
『なあ、ヒロ。ここの4Dシールドを解除しないで、どうやって〈アスロン〉の3D映像探査と4D映像探査を確認したんだ?』
あたしはヒロに確認した。
『4Dシールドの一部を変換して、4D映像探査に使ったんだよ。
〈アスロン〉の探査が3D映像探査だから気づかれなかったんだよ。
4D映像探査に変ったから、こっちの4D映像探査はただちに中止したんだよ。
気づかれてないよ。
だけど、このままだと持久戦だよ。いずれミサイルなりヒッグス粒子弾を転送スキップするしかないなあ・・・』
そう思いながら、ヒロは〈アスロン〉の破壊だけでなく、レプティリア壊滅を考えてる。
あたしらは黙って昼飯を食った。
どうやって〈アスロン〉とレプティリアを攻撃するか、いろいろ考えるがアイデアは無い。なにせ、戦闘能力が同じなんだから、レプティリアを油断させてその間に攻撃するしかない。
〈アスロン〉が4D映像探査してる今は、攻撃できない・・・。
あたしは閃いた。
もしかして、シールドが身を守る鎧(バトルアーマー)なら、敵に面した鎧は外せぬが、敵に面してない背後の鎧は、一瞬のピンホール間隙を開くなら、敵に気づかれないかも知れない・・・。
『それ、とっても良いアイデアだよ。
〈アスロン〉に気づかれない「背後」はここの地下の方向だよ・・・。
でも・・・』
ヒロはまた考え込んでる。ヒロ専用のサンドイッチを食いながら・・・。
本来なら、4D映像探査は物質全体をスキャンするが、これは探査対象が飛行体など独立した物体の場合だ。〈アスロン〉の4D映像探査は、建物のある程度の深淵、つまり地下までだから、ここの地下深くは探査してない・・・。
うまくすれば〈アスロン〉に気づかれずに、この〈ガジェット〉の背後、つまり地下深くから地球の反対側を伝って攻撃できる。
そして、地球の反対側の地上からではなく、静止軌道のスパイ衛星が攻撃したように見せかければ、レプティリアはC国のスパイ衛星を攻撃する・・・。
こんな事、できっるかなあ・・・
あたしの考えを知ってヒロが説明する。
『それ、とって良いアイデアだよ。地下方向の4Dシールドをピンホール解除して、地球の反対側の地上経由でスパイ衛星にヒッグス粒子弾をスキップするんだよ。
ヒッグス粒子弾はプログラム通り、ターゲットに自己スキップするよ。
そしたら、〈アスロン〉は、時空間から消滅だよ。
ついでに、レプティリアの本拠地を探らなくっちゃね!
地下方向の4Dシールドをピンホール解除して、レプティリアの本拠地を探ればいいよ。
昼飯食ってから、のんびり4D映像探査するよ』
ヒロに余裕が現れた。
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