5 得たいの知れぬ者たちはレプティリア

 映像が消えて、ヒロと大叔父さんとトモキとヒロシが脳裏に現れた。


『ねえねえ、映像、見たよね。みんな、どう思う?』

 ヒロがニコニコしながら、あたしらの心を見てる。


『どう思うって、あいつら人間じゃなかぞね?』

 大叔父さんが看護師と見舞客の顔を思い返した。

 看護師と見舞客の話し声は喉を鳴らすようなくぐもった音だ。四人の顔はのっぺして、縦長の瞳の大きな目と鼻梁の無い二つの穴と、唇が無い口角の上がった口があった。


『レプティリアだよ。爬虫類のトカゲが収斂進化したレプティロイドだよ・・・』

 ヒロは映像と言葉でレプティリアを説明した。


 レプティリアは、爬虫類のトカゲが収斂進化したレプティロイドだ。

 レプティリア(レプティロイド)は、獣脚類が収斂進化したディノス(ディノサウルスが収斂進化したディノサウロイド)やラプト(ヴェロキラプトルが収斂進化したラプトロイド)とは異なり、穏やかだが爬虫類だ。基本的な捕食行動は、獣脚類同様に哺乳類が対象だ。



『あの映像は未来なんだよな?』

 捕食行動は哺乳類が対象だと知って、ヒロシが不安を無くそうとしてる。


『一般社会にレプティリアが侵出するのはあの映像みたいに近未来だよ。

 だけど、奴ら、人間に化けて、何世紀にも亘って人間を操って来た。

 今も、政治や経済の中核として社会に紛れてるよ。

 裏組織の主謀者はレプティリアだよ』


『もしかして、国王や王侯貴族や、経済界を支配してきた一族の事かいな?』

 大叔父さんは、自分の疑問が的外れであれば良い、と思っている。

 だが、ヒロは、

『そうだよ』

 あっさり、大叔父さんの疑問を肯定した。


『えれえ、こったぞ!!』

 ヒロシとトモキが驚いてる。


『裏組織の奴らが人間だろうとレプティリアだろうと、どっちも壊滅するんだから気にすんな!

 それより、人間に化けてるレプティリアと人間の一般人を、どうやって区別するんだ?この〈ガジェット〉、そのために使うんだろう?』

 あたしはヒロを問いただした。


『そうだね。人間に化けてるレプティリアを壊滅する攻撃型宇宙艦〈ガジェット〉だよ。〈ガジェット〉は思考制御だよ。考えた通りに飛ぶよ。

 攻撃も、考えた通りになるよ。

 今のとこ、奴らには、〈ガジェット〉に対抗できる兵器も、戦闘機も戦闘爆撃機も無いよ』


『戦闘爆撃機ってどう言う事だ?』

 トモキが不審げに考えてる。

『レールガンの弾丸も、ミサイルも、電磁兵器も、全て防げる強力なシールドを張れるよ。

 シールドは素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドで、外部からの攻撃を防御遮蔽するよ』


『核攻撃も防御遮蔽するのか?』

 ヒロシが驚いてる。

『そうだよ』


『電磁パルス兵器もか?レーザーパルスもか?粒子ビームパルスもか?』

 トモキが質問した。

『そうだよ』

 ヒロは丸顔のおっきな目をクリクリさせて笑顔だ。ショートの緩くウエーブした薄茶の猫毛が話すたびに揺れてる。


『じゃあ、無敵なんだね?』

 あたしが訊くと、ヒロが真顔になった。

『ヒッグス粒子弾で攻撃されても、〈ガジェット〉のシールド内のヒッグス場も、〈ガジェット〉の空間ヒッグス場もシールドされてるよ。

 ミサイルやレールガンの弾丸やヒッグス粒子弾を、転送スキップ(時空間転送)攻撃されても、安全だよ』


 ヒロの説明に皆が驚いた。ヒロの説明を理解できず困惑してる。

 大叔父さんが皆の疑問を質問した。

『のお、ヒロ。順番に説明してくれんかな?』


 皆の疑問を察知してヒロがあたしらの脳裏に、あたしらの疑問、ヒッグス粒子弾、ヒッグス場、空間ヒッグス場、転送スキップ(時空間転送)攻撃、それらの説明を伝えてきた。

『・・・』

 あたしらの思考は停止した。

 唯々驚いて、ヒロの説明を自己意識領域(自己意識の領域は、意識、思考、精神、心、霊、魂の順に無意識領域へ移行する)に受け止めた・・・。



『転送スキップ(時空間転送)攻撃は。あたしらの念動力(テレキネシス)と同じだな。

 ヒッグス粒子弾は、あたしらが物質を念動力(テレキネシス)で移動させる段階で、現場から消滅させたままにするって事だな・・・。

 ああっ!あたしらの精神思考は、ヒッグス場を介して念動力(テレキネシス)を使ってるんだあ・・・』

 あたしはあたしなりにそう理解した。


『そうだよ。みんなの精神思考で、精神波も念動力の対象の物質も素粒子に変換して、ヒッグス場を介してテレポートするんだよ。

 テレポートするのをやめれば、素粒子になったまま、ヒッグス場に留まるよ』

 ヒロは、精神波を操れるなら当然でしょうとの表情だ。


『それって、この次元から消滅する事だな。

 俺たちの念動力(テレキネシス)能力は、転送スキップ攻撃と、ヒッグス粒子弾と同じか・・・』

 ヒロシとトモキが唖然としてる。


『生きた爆弾じゃな・・・』

 大叔父さんが納得してる。


『ねえねえ、〈ガジェット〉の説明してたんだよ。話が反れてるよ。

 まあ、無敵の〈ガジェット〉だね。今のところは。

 ああ、それでね。〈ガジェット〉は皆の心の精神思考で動いて制御できるんだよ』

 とは言うヒロから、、安心していない様子が伝わってきた。

 いったい、ヒロは何を気にしてるんだ・・・。



『あたしはレプティリアを気にしてるんだよ・・・』とヒロ。


 ヒロはレプティリアの実態を気にしてる・・・。一般社会にレプティリアが侵出するのはあの映像のように近未来だ・・・。レプティリアは人間に化けて、何世紀にも亘って人間を操って来た。今も政治や経済の中核として社会に紛れてる。裏組織の主謀者はレプティリアだ・・・。

 レプティリアは何処に居るんだ?


『よく考えれば分るよ。

 世界の歴史を牛耳ってきたのは誰だった?

 一族だったり、突如現れた英雄だったりするけど、世界は一つの方向へ進んでる。

 一時は世界が民主的な世界に変る兆候を見せたけど、また過去のように、独裁と支配の体制に進んでるんだ。

 裏でレプティリアが独裁者に指示してるのは明らかだよ』


『てことは、独裁者はレプティリアと内通してるんか?』

 ヒロシの目が輝いてる。


『レプティリアはそんな事をしないよ。

 レプティリアは思念波レプティカで人間の精神と意識を支配して操ってるんだよ』


 爬虫類レプテルの伝達能力レプティカは特殊な思念波だ。得物に逃げられない意識を植え付ける。蛇に魅入られたカエルは、蛇の思念波レプティカで動けないように支配されているのだ。


『独裁者の周りを探ればいいんか?』とトモキ。

『そんなんで、レプティリアが見つかる訳が無いだろうに!

 見つかるんだったら、とうの昔に見つかってるさ!』

 あたしはトモキに睨みを効かせた。と言っても精神思考でだ。

『じゃあ、どうすんだよ?』

 ヒロシも慌ててる。

『あたしらの精神思考は何だ?精神波は何だ?』

『探査できる・・・。4D探査(素粒子信号時空間転移伝播探査)だ!!』とトモキ。



『あたしらでも探査できるし、この〈ガジェット〉を使っても探査できるよな。なあ、ヒロ。〈ガジェット〉で探査しよう』


『うん、でもね、探査する手間が省けたみたいだよ・・・』

 あたしらの脳裏に、〈ガジェット〉ほどの立体アステロイド型戦闘機の〈ダイナス・アスロン〉の映像が現れた。


 ヒロが未来を説明した。

 スペースファイター・立体アステロイド型戦闘宇宙艦〈ダイナス・アスロン〉はディノス(獣脚類ディノサウルスが収斂進化したヒューマノイドでディノサウロイドの略称)の母星、オリオン渦状腕深淵部デロス星系惑星ダイナス(デロス帝国の母星)で開発された戦闘宇宙艦だ。


 ちなみに、あたしらが搭乗してるこの宇宙艦〈ガジェット〉は、薄形立体カージオイ型戦闘機の〈リブラン・ガジェッド〉だ。ラプト(ヴェロキラプトルが収斂進化したヒューマノイドでラプトロイドの略称)の母星、オリオン渦状腕深淵部リブライト星系散開惑星リブランの、リブラン王国で開発された戦闘機だ。


 ラプト(ヴェロキラプトルが収斂進化したヒューマノイドでラプトロイドの略称)のリブラン王国は、オリオン渦状腕のヒューマ(人類・ヒューマン)の友好国で、ヒューマと共に、宇宙支配を狙うディノスのデロス帝国を壊滅した。



『だけど、どうしてそんな未来の戦闘艦がここにあるんだ?』とトモキ。

『そんな説明より、〈ダイナス・アスロン〉は何してるんだ?』とヒロシ。


『レプティリアが〈アスロン〉を使って、レプティリアの敵対勢力を調査し始めたんだよ。だけど、ここは、さっき説明したシールド(素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドによる防御遮蔽)を張ったから心配ないよ』

 素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドによる防御シールドは強力だ。核攻撃もレールガンの弾丸も、ミサイルも、電磁兵器も全て防ぎ、レーザーパルスや粒子ビームパルスなど電磁パルス兵器の攻撃も防御遮蔽する。

 ヒッグス粒子弾で攻撃されても、シールド内のヒッグス場も、〈ガジェット〉の空間ヒッグス場もシールドされる。ミサイルやレールガンの弾丸やヒッグス粒子弾を、転送スキップ(時空間転送)攻撃されても安全だ。



『ここが安全なのは、ここに俺たちが精神波でシールド張って0次元変換したから温故知新屋も安全で、店の存在は3D映像探査できないのだよな』

 トモキが確認してる。

『そうだよ。〈ガジェット〉がシードしたから温故知新屋も安全だよ』とヒロ。


『そしたら今度から、バリアはやめて、シールドを使おうぜ。紛らわしくてどうにかなりそうだった。いまだに区別できねえよ・・・』

 ヒロシから拘りが消えた。

 気にしてるのは言葉の違いだけだぞ。障壁(バリア)と盾(シールド)の違いだって言うに・・・。


『じゃあ、逆4D探査するね。〈アスロン〉の3D映像探査波を探ればいいんだよ・・・』

 ヒロが探査を始めた。同時にグーッと腹が鳴った。まだ昼飯を食ったばかりなのに!!

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