3. ドライブ
田中家の自家用車の中。
運転席には父親。隣に、助手席に母親。
後部座席に、
英雄が、"
今晩は、高級焼肉食べ放題。
ドライブを一番楽しんでいるのは、母親。
上機嫌に、ベラベラとお喋りが止まらない。
「そう、この人ったらずーっと、『(低い声で)単身赴任なんか寂しくない』だなんて強がってたのよ? で、いざ集まってみたら、『(再び低い声で)焼肉奢りだぁ! 車は出す、俺は酒は飲まんぞ! 喜ばしい家族の再会だ、パーっとやろう!』なーんて、張り切ってるのよ」
夫を
「いいだろう別に! 文句あるのか! タダで焼肉食べるクセに!」
冗談ぽく、怒る父親。
「えー? なんてー?
「おいっ! 英嗣、音を下げなさい! ほらっ!」
\世はまさに、大航海時代!/
大音量の、アニメのナレーション。
英雄は、英嗣のスマホを
「あれ、
「え? 『宇宙海賊アルカイダ』だけど。兄貴、知ってる?」
「知らん。というか、何のアプリで見てるんだ?」
「
「え、"
「なんか、まだ見れた」
「ほぉ……。あー、今月一杯はいけるのか」
運転中の父親が、チラと後ろを振り返り、
「家族を再会に導いたサブスクだ。ギリギリまでお世話になろうじゃないか」
と、言った。
「ひゃあああ! あなた! 前っ!!」
母親の叫び。
ブレーキは間に合わなかった。
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