2. 削減

 英雄ひでおは、ポケットからスマホを取り出す。


 スマホのホーム画面。


 家計簿アプリを開く。


「うわ! 今月の支払いやっば! 飲み会行きすぎたかなぁ……。そういえば、先週の会社の飲み会、上司陣から誘っておいて一円もおごってくれなかったよなぁ。本当ケチだわ。あー、なんか、削れる出費はないかなぁ……」


 〈サブスクリプション〉フォルダのアイコンをタップ。

 

 中には、十個弱の、音楽やら動画やらの〈サブスクリプション〉アプリ。


 そのうち一つに、〈☁️クラウド〉のマーク。


 そのマークは、一定期間非仕様のアプリに表示され、データのみが残され、アプリは一時削除された状態。


 断捨離チャンス。


「あ、これ! "Video Vikingビデオ・バイキング"なぁ。そういや、一年くらい使ってないんじゃないか? だいぶ損してるかも、月額、いくらだっけ……」


 ウェブブラウザが開かれ、検索窓に〈ビデオイキング月額料金〉と打ち込まれる。


 検索。


───────────────────

 もしかして:ビデオバイキング 月額料金


Video Vikingの「スタンダードプラン」は、月額1,490円です。

───────────────────



「うわー、結構だな。もっと早くに解約してたら、一年分……げっ! 二万円くらい浮いてたってことか!? 最悪……」


 再び、ブラウザから、ホーム画面へと切り替わる。


 "Video Vikingビデオ・バイキング"アプリのアイコンが、長押しされる。


 アイコンは強調ハイライトされ、そこ以外の背景は、もやがかかったようにボヤける。


 そして三文の並んだモーダルウィンドウが表示される。



+        +

 アプリを削除

 アプリを共有

 ホーム画面を編集

+        +



「はい、削除。さよなら〜」



 一文目、〈アプリを削除〉がタップされる。



+               +

    "Video Viking"を

    取り除きますか?

 ※ホーム画面から取り除くと、

  アプリはアプリライブラリに

  保持されます。

 ──────────────

     アプリを削除

 ──────────────

   ホーム画面から取り除く

 ──────────────

      キャンセル

+               +



「はい、〈アプリを削除〉っと……」


 人差し指は、〈アプリを削除〉の上へ。


「いや、待てよ」


 手の動きが止まる。


 指の腹は、まだ画面上に着地していない。


「おかんが、まだ韓ドラ見てるかもしれない。実家のテレビにはいっつも塩顔イケメンが映ってたからなぁ。懐かしい」


 モーダルウィンドウは閉じられる。


「家族〈ROOMルーム〉、久々に動かすか」


 メッセージアプリ〈ROOMルーム〉のアイコンがタップされる。


 家族四人のトークルームが開かれる。


 びつきかけた部屋に、メッセージが投げ込まれる。



      田中家の一族(4)

───────────────────

⚫️<久しぶり〜


⚫️<家族でアカウント共有してた

  ビデオハイキング解約しようと

  思うんだけど、まだ使ってる人

  いる?

───────────────────

〉 (   メッセージを入力   )🎙️

───────────────────

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