裏社会で有名な極悪少女、学校で優等生するらしいぜ

風宮 翠霞

第1話 「私、高校行きます」

「私、高校行きます」


 その日––––たった一人の少女の言葉によって、ヤのつく職業の代名詞とも言われる有名な組である【鬼櫻きざくら組】に激震が走った。


 パッチリと開いた目は薄桃色で、紺色の髪をポニーテールにまとめていることから元気で明るい雰囲気を感じさせる……そんな、十人に聞けば八人は「かわいい」と言うであろう容姿をした少女によって、組長が頭を抱えることになるほどの衝撃を与えられたのだ。


「……」


「組長?」


 頭が痛いというように黙り込んだ組長の代わりに、少女と組長が向かい合って座っている場に同席していた俺は少女–––– 未船みふね秋華しゅうかに声をかけた。


「おいおいおい……。お目付役の俺も初耳なんだが……うちの組の若頭補佐にして一番の問題児、秋華様が何だって? おい秋華、もう一度言え」


 俺の容姿は薄い目は黒曜石のような深い黒で、まだ一応真っ黒な状態を保っている髪を適当に押さえている。

 背は高いがスーツから見える線は細く、頼りない印象を受ける体つきで平凡顔ではあるが、結構整った方だと言える顔立ち。


 まぁ……極道らしいとは決して言えない見た目だが、若頭として秋華が暴れた後の説教は散々してきたんだ。ある程度の効果はあったらしい。


 秋華は俺の方に向き直って、姿勢を正してもう一度話した。


「私、高校に合格した!! だから行って来ます!!」


 ……うん、わからん!!

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