第2話 望まぬタトゥー

 原因というものは余りにもくだらない。

 髪型が変だの、大人しいだの、運動が苦手だのとどれもくだらない。

 しかし、この『小さき者の社会』ではこれらが重要になってくる。

 当然プロに髪を整えてもらう方がいいし、明るいキャラクターの方がクラスで人気者になれるし、運動ができることによる影響力は大きい。


 少年の場合、親に切ってもらっていたせいか変な髪型だったようで(本人に自覚は無い)、人見知りもあり非常に大人しく、運動もできない。

 おまけに瘦せ細った身体で勉強も出来ないときた。


 要するに、悪い言い方ではあるが『小さき者の社会』における弱者の見本だった。

 弱者が平和に過ごせる程ここでの六年間は甘くはない。

 強者は弱者に喰らいつき、弱者はそんな強者の気が済むまで牙を突き立てられる。


 何度も…何度も…何度も…。



 そして…いや、少なくともこの少年は声を出すことが出来なかった。

 これは病気で声が出ないとかそのような意味ではなく、助けを求めることが出来ないという意味だ。

 これでは強者にとって実に美味い獲物でしかない。


 最終的に(無論、強者は知る由も無いだろうが)強者に付けられた傷は一生消えないものとなる。

 まさに本人の意に反して彫られた『望まぬタトゥー』である。






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