第20話
「ほかにはどんな夢を?」
「いつも一瞬の場面だけで繋がっていないんですけど、どこか異国の風景が出てくるときもあって……」
ふざけた話だとそっぽを向かれそうな気がして、最後は尻すぼみになった。
しかしオスカーは、バカバカしいとあきれることなく真剣に耳を傾けている。
「もしかして、そこでは髪も瞳の色も黒じゃなかったか? 服装は前合わせの“着物”と呼ばれる衣を着ていた?」
「そのとおりです。夢に出てきた使用人の女の子が“まがれいと”という髪型の名前を言っていました」
「やはりそうか。レーナ、一緒に来てくれ」
なにかまずいことを口にしただろうかと、レーナは不安になって眉尻を下げた。
オスカーの表情を見る限り、ウソをついているとは思われていないみたいだが。
「こっちだ」
レーナはどこに向かうのかわからないまま、オスカーの後ろをついて行った。
シルヴァリオン宮殿の正面広場を通り過ぎたオスカーは、どんどん王宮内の東側のエリアへと進んでいく。
「あの、ここは……私が立ち入っていい場所ではありません」
足を踏み入れたことはなくとも、レーナはこの先になにがあるのかわかっていた。
王太子が結婚後住む予定にしているフィンブル宮殿だ。
「大丈夫だから。おいで。見せたいものがある」
足を止めたレーナに、オスカーが手招きをして呼び寄せる。
入口の門の前で警備をしていた衛兵ふたりがオスカーの姿に気づいた途端、きびきびとした動作で頭を下げた。
フィンブル宮殿の中は秋のさわやかな風が吹き抜けていて、清掃も行き届き、とても綺麗な宮殿だとレーナは思った。
小さな池のそばを通って奥へと進んでいく。すると今度は花畑のような光景がレーナの目に飛び込んできた。
「綺麗だろう?」
「はい。とても」
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