第2話
「最近、よく夢の話をするよね」
ジェシカの言うとおり、レーナはここ最近ぐっすり眠れていないせいか、夢を見ることが多くなった。
今朝は王宮内での出来事だったけれど、まったく知らない場所が出てくることもある。
どこか懐かしい感じがするものの、登場する人物も風景も屋敷もこの国とは丸きり違っていて、とても不思議な夢だ。
しかし、おかしなことを言うと思われたくなくて、レーナは誰にも話せていない。
「今日は洗濯を早く片付けて、お昼には調理場に行かなきゃ」
「そっか。レーナと一緒に働けるんだね」
「オディル様に叱られないようにがんばる」
使用人たちの仕事を采配して束ねている使用人頭がいる。オディルという名の四十代の女性だ。
レーナは主に洗濯や衣装のほころびを直す係りなのだけれど、ほかの部署で手が足りないときは応援に回ることになっている。
昨日仕事を終えるころ、調理補助係のマリーザが体調を崩していて実家に帰らせているから、調理場を手伝うようにとレーナはオディルから指示を受けた。
調理場はせわしない場所だが、気心の知れたジェシカがいるので緊張しないで働ける。
顔を洗って身だしなみを整えたレーナとジェシカはそれぞれの持ち場へ向かった。
王国の歴史や古代の英雄たちを記した石碑が並ぶ広場を通り抜けると、洗濯係が仕事をしている場所にたどり着く。
同じ洗濯係の同僚たちに「おはよう」と笑顔で声を掛け合う。
大きな井戸のそばに木製のたらいがたくさんあって、洗濯物が山積みにされている。
すぐ近くには王宮の衛兵や騎士たちが剣や弓の訓練を行うための鍛錬場があり、何人かの男性の声が聞こえてきた。
そんな中、手押しポンプを使って井戸の水を汲み上げる。――――これがレーナの日々のルーティンだ。
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