ばあちゃんの庭

満つる

プロローグ

2年後



 3年一区切りと言う。この場合は数えだから、3年でなく、正味2年。

 こういう昔からの数字、決まり事は、経験知とでも言うのだろうか、よく出来ていると思う。私にとっても諸々片付けるのに必要な長さだった。


 それでも、どうしてもひとつだけ、決められずにいることがある。

 それであと1年だけ、考えることにした。これで丸3年。

 順当ならちょうど孫の洋が大学入学の頃までになるから、そういう意味でも区切りとしていいのではないだろうか。


 もちろんこの1年の間に私が死んでしまうことだってあり得る。何せ来年で80。夫の孝が突然、死んだ年齢になる。私にも同じようなことが起きておかしくはない。

 だからと言って若ければ明日が保証されている訳でもないことは、誰よりも分かっているつもりだ。

 私にもしものことがあったら、決めるのは家族に任せる。向こうにいるたかしまきのふたりもきっと文句など言わないだろう。


 その場合に備えてという訳ではない。誰に向けてというでもない。考えるよすがとするために、この1年、庭で咲く花を順に書き記す。どれも皆、家族の誰かを思い考えて植えてきた植物たちだ。


 

 これは私が何十年もかけて共に過ごし、育ってきた、植物と家族の記憶。


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