短歌集『百葉箱』

31音程度の恐怖を

この村に人は一人もいなかった

道に血濡れの足跡続く

ChatGPTの答え「お前ら俺をバカだと思ってるだろ」

このトイレ　昔は花子がいたらしい

今は？　【せんせい】専用便所

十字路に差し掛かる度爺ちゃんが呼んでくるもう死んでるくせに

「行くな」を聞かずに進んだ先で待っていたようやく会えた入れた

死んだ兄に似た人形は夕方に壁をじっと見る

「久しぶりだね」と微笑む死んだ姉

でも後ろにはソレの姿が

廃校舎からたまに鳴る　「タケル君はずっといのこりです」の放送

秋の晴れ渡る深い青空の奥底から

「助けてくれ」と聞こえて

その政権放送は

途中からただの悲鳴になった

お色直しから戻った花嫁

なんか新郎食ってる皆様

「あかんこれあかんわホンマ」と僧の言う

「ここまで来るとは思わんかった」

もし生まれてたらこういう顔でした

とだけ書かれた選挙ポスター

明日は晴れのちヤジさんが生き残る

見込みでしょうと高橋アナが

調べても調べてもなお死者のない

みんな生きている事故物件

世界が終わる三日ほど前に来た　

「出勤してください」の通知

助からぬならせめて高いところへと

スカイツリー埋め尽くす屍

「絶対に、部屋から出ないでください！」

ビル壁面ディスプレイが言う

生前の君の部屋片付いたから

蝶をたくさん殺して撒いた

東京人間牧場は今秋出荷倍増の報

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お色直しから戻った花嫁

なんか新郎食ってる皆様

緩急を意識。愛でたいとされる結婚式の場で起きたカニバリズムの落差を演出。「なんか」のおかげでそのへん強調できたと思う。

「絶対に、部屋から出ないでください！」

ビル壁面ディスプレイが言う

「政見放送」「高橋アナ」とこれの三つをニュース短歌と呼んでる。二つとの違いは「ビル壁面ディスプレイ」で、壁面のディスプレイが見れる位置にいるということはつまり外にいる可能性が高い、ので……という短歌。