幼馴染との再会②
先生が去ってからというもの、安羅祇さんの周りには人だかりができていた。主にクラスの陽キャの方々が質問攻めをしている。
あれ、あいつって隣のクラスのやつじゃないか?いつの間に入ってきたんだよ。
「いやぁ、すごいね。安羅祇さん。さすがだよぉ~」
蓮人が少し面白おかしそうに笑いながら俺のところへとやってきた。
蓮人はあれか。同じ部活になるだろうから今は別に話に行く必要もないってことか。同じ部活ならアドバイスなんていくらでも聞けるだろうし。
少し同じ男として羨ましい気持ちもある。
あれだけ可愛らしい子と関りを持つこともそうだし、なんといったって陸上部だというところだ。
陸上部といえばあの…いや、これを言ってしまえば社会的に終わってしまいそうなのでやめておく。
「そういえば安羅祇さん、さっき蜂須賀くんのことを見てた気がするよ?」
「んなわけっ。多分品定めっつうかなんつうか。クラスメイトを全員観察してたんじゃないか?」
ネット情報ではあるが転校生というものは最初にクラスメイトのことを品定めするんだとか。
そして大丈夫そうな人と関りを持つ。
立場的に大変だろうしな。
「そうかな~?僕は見られてないと思うけど」
「それこそ気のせいだろ。同じ陸上部になるんだから特に注意するんじゃないか?」
「確かに、そういわれてみれば」
「だろ」
我ながら納得のいくことを言えた気がする。
それから俺たちは他愛のない話で盛り上がっていると、突然クラス全体に沈黙が襲う瞬間があった。
なんだなんだ、と内心戸惑っている中何かを察した様子の蓮人がこそっと耳打ちをしてきた。
「ねぇ、やっぱり安羅祇さん蜂須賀くんのこと見てるよ?」
「だから、んなわけっ…って、まじかよ…」
冗談だろぉ、と安羅祇さんのちらっと見た瞬間、ビクッ、と寒気が走った。あれは間違いない。
確かに彼女は俺のことをじっと見つめていた。なんの迷いもない瞳で、俺の瞳をまっすぐに貫いた。
「なあ、安羅祇さん。聞いてる?」
「ああ、ごめんなさい。ちゃんと聞いてますよ」
「ほら、やっぱり見てたでしょ?蜂須賀くん」
まさか本当のことだったとは。見るからに高嶺の花であろう安羅祇さんから見られているとは思わんだろう?!
俺は悪くない。
でも俺の中にはある考えが浮かび上がってきていた。
「わかったぞ蓮人。あれだ、あれだよっ」
「落ち着いてから話してね、蜂須賀くんっ」
ああ、そうだなと言って一度深呼吸をする。
…ちょっと落ち着いたかな。
「あれだよ。俺たちがわいわい彼女にところに行かなかったから多分不思議に思ってるんだよ」
なんか彼女が自意識過剰みたいな言い方になってしまったが、まあそういうことだろう。
クラスメイトのほとんどが彼女のところへ赴いているのに俺とか蓮人を含めて数人は自分の席で普段通りに過ごしているのだ。
気になるのは仕方ないだろう。俺だってその立場であれば同じ感想を抱くはず。
簡単に解説すると、俺たち陰キャは面倒くさいのだ。興味はないわけでは決してない。どっちかといえばすごい興味はあるが、関りにいこうとしないだけ。
無理に関わろうとすると陽キャたちから調子に乗るな、とか言われたり、女子たちにきもがられたりするのがすごく面倒くさい。
陰キャは肝が据わっているからいくら罵倒されてもダメージは受けないが、平穏な学園暮らしを壊してまで関わりたいとは思わない。
ということを蓮人に熱弁すると、彼は若干引き気味にうなずいた。あ、やべ。友達を失ってしまったかもしれない。
「蜂須賀君の言いたいこともわかるけど、さっきの安羅祇さんのあれは…ちょっと違う気がするな。あくまで僕から見てだけど」
「そうか?でも蓮人の言うことは大体あってるしな。そうなのかもな」
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