第10話 社畜! ブラック企業へ立ち上がる!
力尽きた俺は目を閉じると世界は闇に包まれた。
しかし!?
黒一色の世界に何故か一瞬にして光が溢れた。
どう言うことだ?
「おろおろ? こんな所でへたばってもらうと困っちゃうなぁ?」
と何とも気の抜けた無責任そうな感じのする声が聞こえた。
俺は何事か? と思って重い体を声の主の方へ向けると……
光の世界の中に際立つ様に成人男性の様な影が立ちながら俺の顔を覗き込んでいた。
「あんた、一体何者だよ⁈」
と俺は絞り出す様に声を出すと、影は頭を掻きながら
「ん? 僕? そうだなぁ……君たちで言うなら神さま? かな? 多分ね」
神さまだ……と?
「いや、正確に言うなら世界の理や宇宙の調停者の方が良いんだけど、君にそう言っても理解できないでしょ?」
世界の理? 宇宙の調停者? 何だそりゃ?
俺は黙って首を横に振ると
「だよねー。君の頭では到底理解できないのは知ってるから、とりあえず僕の事は神さまでいいよ!」
「そもそも、ここはどこだ? 俺は確かにギルドにいたはずだが……?」
「うん、そうだね。悪いけど君の魂だけ僕の世界に連れて来た。大丈夫! 大丈夫! 話が終われば戻すから、そんなに睨まない。そんな顔だと一生結婚できないよ! ごめん言いすぎた! 失言、失言! ええっと……それでお願いがあるんだ! 聞いてくれるかな?」
俺にはわかる……こいつは相当の曲者だ!
「聞いてくれるかな? じゃないだろ? 聞かないと戻さないよ! の間違いじゃないのか?」
それを聞くと自称神さまは腹を抱えながら笑って
「わかっているねぇ! いいよ! いいよ! その擦れた心! 僕は大好きだよ!」
と、大変ご満悦らしく盛大に笑ったあと
「なら、話は早い! 僕の仕事は世の中のバランスを保つ事なんだ。なんて言うのかな? 世の中が幸せに溢れて偏ったら、戦争などを起こして不幸を与える。その反対に不幸に偏ったら、平和やお金を与えて幸せを与えて幸せと不幸のバランスを保つ事なんだ。結構、大変なんだよ。いちいち、人の幸せや不幸せを調べて調整するのって!」
「それで、その神さまが俺に何の用なんだよ?」
「いい! いい! その猜疑心の目! ゾクゾクする!」
さっきから話してみても、コイツ……絶対何かが壊れている……バランスを保たなきゃならないのはコイツの性格と心じゃないのか?
「やっぱり、僕の目は間違っちゃいなかった! 君こそが適任者だ! それでね……僕のお願いは……」
俺は自称神さまの次の言葉が何が飛び出てくるか固唾を飲んで待っていると
「ブラック企業を潰してもらいたんだ! いやね……君の住む地球の日本は、平和なのに余りにも不幸に偏り過ぎているんだよ。どうしてなのかなぁ? と思って調べてみたら……何と驚く事に、この日本と言う国にはブラック企業がもうあちこちに、うじゃうじゃあるんだよ! そこで雇われている人は多くの処理できない仕事を与えられてコキ使われている! それじゃあ不幸に偏りすぎてしまうよね? だ・か・ら! 君がその元凶のブラック企業を無くしてくれたらバランスが取れるんだよ! それは、わかるよね?」
「わかるも、何も、俺に何ができるんだよ? 今の俺は単なる冒険者だぞ!」
自称神さまは興奮する俺を宥めるように
「だから、その為の力を僕が君に与えようと言う話じゃない。ゲームやラノベ読まないの? 普通はこう言う展開は必ずのお約束だよ」
ゲームやラノベ読まないかって?
仕事漬けの俺にそんな余裕があると思っているのか?
と、怒りが顔に現れたのを見て察した自称神さまは
「うわぁ……ブラック企業って、そんな些細な楽しみも与えてくれないんだぁ……。なら、徹底的に滅ぼさないとね」
自称神さまは腕組みするとうんうん1人で頷くと
「なら、君に神さまからプレゼントを贈ろう! 何がいいのかなぁ……うーんと……」
と、そのまま考えこむと、ハッとした様に
「かつての英雄に力は大したことないけど、人徳……つまりカリスマで国を建てた人がいたなぁ……玄徳くんって言ったっけ」
「おい! あの蜀漢の劉備玄徳の事か?」
「そうそう! はっきり思い出した! あの時の中華も相当不幸に偏っていたから、僕、あの子に会って力を与えたんだよね!」
マジか……まぁ、確かに単なるいっかいのムシロ売りが国を建てたなど、奇跡以外何物でもないが……こんな、かなりいい加減そうな奴だが、信じてもいいのだろうか? それとも相当のペテン師なのだろうか?
と、俺の頭の中で自称神さまを見つめながら吟味していると
「きーめた! 君には人を惹きつけるカリスマを与えよう! 大丈夫! 黙っているだけで力のある人が寄って集まって来るから、君はその人たちを纏めるだけ! その力でこの日本のブラック企業をぶっ潰してね! それじゃあ、頼んだよー!」
と自称神さまとその白い世界は薄れていき、気づいたら元のギルドの戦闘訓練所に戻っていた。
「一! 大丈夫か? 意識を失っていたが?」
何と! あの冷血そうな小林が心配そうな顔で俺を見つめていた……
これは……夢じゃないよな?
あの自称神さまと会う前後で俺の環境がまるっきり変わるとは……その時の俺はまだはっきりと自覚できてはいなかった……
そして、始まる! 反旗の序曲が!
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