エロゲのモブキャラに転生したけど、メインヒロインたちは激ヤバ系だから主人公に押し付けたい(叶わぬ夢)
チドリ正明
第1話 ラブファンタジスタ!
「私たちの誰を選ぶのよ! 断ったらあんたを殺して私も死ぬ!」
活発な幼馴染が叫んだ。目に光が宿っていない。
「選ばれるのはわたくしに決まってますわ。今日もお散歩してくださいまし……」
優美なお嬢様が笑った。首輪をつけ、犬のようにヨダレを垂らしている。
「……先輩、わかってますよね? 大人しく私に縛られてください。そしてペットになってください」
あざとい後輩が涙ぐんだ。手にはムチを持っている。
「お、お義兄ちゃん……いい匂い……っ……」
義理の妹が上目遣いで見上げてきた。俺のパンツ(使用済み)を抱えて嗅いでいる。
そして、四人の美少女に詰め寄られる俺はごくりと息を呑んだ。
視界が歪む。
こんなはずじゃなかったのに……!
「「「「早く選んで!!」」」」
◇◆◇◆
「……あ、夢か」
小綺麗な部屋で目が覚めた。
今の夢はエロゲ『ラブファンタジスタ!』のハーレムエンド達成後のワンシーンだ。
あの後、主人公は四人のメインヒロインからボッコボコにされて死ぬ。
あんな顛末を迎えるなんて絶対に嫌だ。
でも、この世界に転生した以上はどうしようもない。
「マジで”朝霧ハク”に転生したんだな」
俺は転生者だ。前世はアラサーの社畜おっさんで、趣味のエロゲにのめり込む変態野郎だった。
でも、死んだ覚えがない。
なぜか知らないが、気がついたら人気エロゲ『ラブファンタジスタ!』——通称ラブファンの世界に転生していた。
転生と言っても0歳からやり直したわけではなく、つい一週間前、つまり高校二年生の春からのスタートだった。
転生先のキャラクターは朝霧ハク。性別は男。一人暮らし。
鏡の中に見えるように、生まれ持った透き通る銀髪と中性的な顔立ち、華奢な体を持つ美少年だった。
「……よりにもよって朝霧ハクになっちまったか」
顔を洗いながら呟く。
ラブファンは主人公の
鈍感でバカな和樹が数多くのラッキースケベを体験し、無数のフラグを乱立させ、百に近いエンディングを披露してくれる。
中には全ヒロイン自殺エンドや浮気バレ殺人エンドがあったりする。さっきのハーレムエンドもなかなかやばいエンドだ。
もちろん順当なハッピーエンドも用意されているが。
そんな中で朝霧ハクの立ち位置はというと、そりゃあもうなんとも微妙なものだった。
「隠しルートとして主人公の和樹とBLエンドが用意されてるんだっけか。まあ確かに……この美少年が相手ならいけなくもないか?」
朝霧ハクは男とも女とも呼べる見た目だし、物好きなら普通に抱けると思う。
だが、俺は絶対に嫌だ。そんなエンドは絶対に避けなければならない。
のぼーーーっとして変哲のない男子高校生の和樹と、そんな関係になるなんてごめんだ。
とにかく、今日から始まる高校生活は何としても穏便に過ごす必要がある。
四人のメインヒロインはめちゃくちゃ可愛いが、その中身は一癖も二癖もあるヤバい奴らばっかりなのだ。
なるべく関わりを持たないように過ごし、主人公に全てを押し付けるのが俺の理想だ。
無論、やりすぎたら和樹が死ぬ未来が近づいてしまうので、適度にトゥルーエンドを目指すのが一番だろう。
誰にも深入りせず、適度に距離感を保ち、穏便に高校生活を過ごす。損得なく無難に卒業するのが吉だ。
「よし! 行くか」
俺は——朝霧ハクは、身なりを整えてアパートを出た。
主人公とヒロインの一人とは同じクラスだったはずだし、早速その姿を拝ませてもらおう。
次の更新予定
2024年12月25日 18:02
エロゲのモブキャラに転生したけど、メインヒロインたちは激ヤバ系だから主人公に押し付けたい(叶わぬ夢) チドリ正明 @cheweapon
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