クリスマスの不穏。
竹串シュリンプ
Christmas unrest
今日はクリスマスだ。
僕、
イルミネーションオブジェのトナカイの赤い鼻を見て、思わずクスッとした。
「なんで笑ってるの?」
一緒に歩いていた少女、
蘭は幼稚園のころから高校生である現在までずっと学校が一緒なのだ。
「幼稚園の頃さ、クリスマス会があったの覚えてる?あの時、僕、トナカイの格好して…赤い鼻もつけさせられて、大泣きしたやつ。」
「あー!覚えてる!めっちゃ嫌がってたよね」
「でも、蘭は喜んでたよね、赤い鼻。かわい~って言ってて。それ思い出してた」
「いやぁ、赤好きだからさ」
蘭はそう言って無邪気に笑う。
彼女を包み込む赤いコートは、その無邪気さによく似合っている。
本当に赤色が好きなんだなぁと感心した。
「まっ、こうやって優と出かけられたし、クリぼっちは回避かな!」
「出かけたって言っても、本屋に参考書と大学入試の過去問買いに行っただけじゃん。」
「いいじゃん、立派なお買い物だよー」
そうポジティブに考えられて、すごいなーと思いながら電気屋さんの前を通る。
新商品のテレビには、ニュースが放映されていた。
『…先月から相次いで発生している連続殺人事件ですが、きのう午後六時ごろ、新たに遺体が
とても不穏なニュースを聞いて、怖くなってきた。それを眺めていた女子高生二人組が「これじゃ、ホワイトクリスマスじゃなくて、血のクリスマス…レッドクリスマスじゃん…」と言っているのを聞いてさらに怖くなった。
「大白市って…隣の市じゃん…。こわ…。」
「首もとって、頸動脈をナイフで切られたってことだよね。血がめちゃくちゃ出るよ」
蘭が冷静に、そう言う。
「蘭って着眼点怖いよね。…とにかく、気を付けないと。犯人はこの街にいるかもしれないんだよ…」
「まあ、そうだね。警戒しとこ、警戒!明るい話しようよ!ホワイトクリスマスなんだし!」
「蘭、ここは都会だから雪は降んないよ。」
「つまんない~」
蘭ははあ、とため息をついた。そして、小さくこうつぶやいた。
「やっぱり、自分色に染めあげろってことだよね…?」
僕はその言葉の意味がわからず、首をかしげたが蘭には何もきかなかった。
******
しばらく歩くと、この町で一番大きなクリスマスツリーが見えてきた。
みんな写真を撮ったり、カップルが眺めたりしていて、にぎわっていた。
が、突如その空間が悲鳴に包まれる。
なぜみんな悲鳴を上げているのか一瞬理解できなかったが、全身の激痛とともに僕はその理由を悟った。
首に手を当てると、血が出ている感覚がした…。
目の前の視界がぼやける。
かろうじて見えたのは、真っ赤なナイフを持つ、赤いコートの蘭。
蘭は満足そうに微笑んで、
「メリークリスマス。」
と言った。
そこで僕の意識は途切れた。
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