第2話 野営地
じいちゃんの部隊は、主に補給部隊が前線にあらゆる物資を送ったり、負傷兵を保護する衛生兵だったりが多く居る中間地点。勿論、前線への援軍、もしくは攻め入られた時には前線と化す場所なので非戦闘員以外の配備もあり、その小隊は中間地点の中では最前線に野営地を設けていた。
通常であればテントか”かまくら”でも作る所だけど、命令があった場所の近場に小さな小屋があり、誰も居ないはずでもあるので自分達の
寝床の準備などが省略されたので、配給されている食料等もあるが何が起こるか分からない戦場ではできるだけ節約が絶対だ。なので現地での調達として周辺の散策とついでの使えそうな薪や食料を集めていた。
小隊は全員で6名。
二人体制でそれぞれ分担して作業を行う。
隊長と新人兵は小屋で防御を固め、じいちゃんは周辺の警戒兼散策を命じられた。逃げそびれた現地の人が居れば保護をしたり、民家があれば武器になりそうな物を撤収しておいたり。
敵側の人間がどこかにもう潜んでる可能性もあるので、自分達の防衛の為にも周辺に自分達の存在を知らしめておく必要もある。敵のスパイが・・・なんて、分かり易いものであればまだいいのだが、たまに致命的になるのが一国民の村々が反旗を翻してくることが、ここのお得意な情報操作、洗脳教育により守ろうとしているのにも関わらず背後から攻撃や夜襲を受けることがあるんだって。
ちょっと、意味が分からないですよね。
今の時代では考えられないかもだけど、義務教育なんて場所によっては無かった時代。日本でも昔は同じこと。それが大陸での末端の辺境地ともなれば、教育どころかインフラですら行き届いていないのが世界の「普通」だと、じいちゃんがずっと嘆いていた。
上水、下水の区切りも無く、川の水は汚染され飲むことも浴びることも出来ない。自然の恵みのバランスも無いに等しく、捕れるだけ採って全ては”早い者勝ち”。個々がその日、生きるだけに必死な毎日であり未来のことなど考えている暇・・・というか余裕が無い。草木一本残らないというのは、生命、生物、生活の息吹そのものが無くなることを指すのだと、じいちゃんは痛感したそうだ。
そんな場所の人にとって、お偉いさんが言うウソや洗脳を疑問視することは到底無い。みんな純粋に騙されてしまう。
そんな辺境地を助けるべくして、みんな頑張っている。その先に得られるかもしれない自国の安全のためにもだが、先ずはその凄惨な現場を見て嘆いたそうです。
周辺は、もちろん極寒の地域だってのもあったが土からも生命の灯火を感じることもなく、別の調達班二名に期待は出来ないと思っていた。
小隊が最初に見つけた小屋は「見張り用の小屋」の可能性があり、もしかして近くにちょっとした集落があるのではないかと隊長も言っていたので、そこも踏まえ小川に沿って上流へと登ってみると本当に小さな小さな、家とも言えない見張り小屋と似たようなまた建物が幾つか点在している場所に出てきた。
村とは決して言えない。小屋が凡そ五つほど。耕されていそうな畑が真ん中にあり、例えば逃げ隠れているような一家がそこに住んでいたのだろう、小規模の集落を見つけた。
その建物群を調べるのも一瞬で終わり、当然のように誰も居なかった。
目ぼしい物すらも無く、ただ全てを焼き払われてはいないのでどこかからに侵略されたようには見えない。
じいちゃんともう一人の捜索員は、とりあえず報告も含めて最初に陣取っている小屋に戻ろうとした。
その時、捜索済みだった小屋の開け放たれた窓に人影のような、『白い物』が目端に入り込んできた。
誰か居る!と、思ったじいちゃんは、相棒に無言の指示を送り二人で警戒しながらその小屋内部をもう一度調べたけど、やっぱりそこには誰も居なかったらしい。
気のせいかと思いこの時はそのまま戻って行った。干されたままで凍った布生地がそう見えただけだと思ったのかも。
恐らく、どうせ野営地をここへ移すだろうと見越しながら、少しの違和感を残しつつ再度、帰路に就いた。
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