『冬将軍と雪女郎』 6,300文字【お題で執筆!! 短編創作フェス】チャレンジ🌟
白銀比(シルヴァ・レイシオン)
第1話 不凍港
これはもう昔に死んだ、じいちゃんから聞いた話です。
時は明治の後半、じいちゃんは徴兵制度にて「後備軍」っていう戦時召集の対象になっていたらしく、ある戦争が始まってしまって召集令状が下りてきた時の話。常備軍として何とか生き抜いてきたのにも関わらず、また戦地へと行かねばならないなんて、とにかくその時は自分の不運を呪いつつも当時はそんなグチなんて巷で零せば非国民だの、裏切りだの言われる時代だってのもあり、
じいちゃんの配属先は、一応に戦の最前線では無かったにしても後備軍まで駆り出されるようになったのは、共に戦い守るべきその戦地だった土地の人間は戦術やら作戦などとても伝えられる様な人たちでは無かったそうで、戦闘員としても使い物にならなかったのが理由だと、当時の隊長やらが不満を漏らしていたらしい。
それでもじいちゃんは
「わしらがやらにゃ、そりゃあもう、アジア諸国は占領されとったぜ?おめぇこりゃ、日本だけの話じゃねぇかんな。一昔前の”豪や新”のようになっていたかもしれん。んん。人攫いが横行し先住民は農奴、性奴となり、新たな疫病が蔓延っても、あちらは知らぬ顔。不凍港が欲しいとか言いよるが、それだけが目的じゃねぇだろしの」
じいちゃんが、とにかく誇らしげにそんな話もしてた。
その戦地はずっと北へ、海も渡った場所だそうで兵士たちみんなは凍えて震えている毎日だった。
雪はずっと積もり、晴天でも溶けることは無く、あらゆるものが凍る世界。
じいちゃんは元々雪国の人間なので慣れてはいたらしく、それらの対処も熟知していた。そんな考慮もいれての配属だったかもしれないが、当時を知る者はみんなそんな余裕もなくひたすら集めただけだろうと皮肉しか出なかった。
「小便も凍り、握り飯も凍る。ハイカラな設備もどんどん凍ってただの鉄屑になりよる。乗り物の燃料も凍り、溶かすのに急ぎにゃ車体ごと燃やすこともあるぐらいでな」
まさか、というじいちゃんの話も、一体どこまでが事実かも分からない。どこまで過去の美談と化してんのかも分からないけど、でも聞いてて面白かったから今でも覚えてんのよねぇ。
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