勇者龍之介

鷹山トシキ

第1話 

 廃墟の中、薄暗い空気が漂う都市で、芥川龍之介は目を覚ます。視界には朽ちたビル群と、遠くから響く不気味な音が鳴り響いている。この地は、かつて繁栄していた都市の中心だったが、今ではウィルスによってすべてが腐敗し、荒れ果てていた。生き残った人々はすでに感染しており、周囲には恐ろしい怪物や罹災者たちが蠢いている。


 龍之介は手にナイフを握りしめ、薄暗い通りを進んでいく。彼にはある依頼があった。生き残ったわずかな人々から、ウィルスの発源を追い、巣穴を見つけ出すというものだ。しかし、彼の心の中には一抹の疑念が渦巻いていた。自分一人でこの恐ろしい世界を乗り越えることができるのだろうか?


 その時、突然、背後から重い足音が響く。振り向くと、ケンシロウが現れた。彼の顔には何の感情も表れていないが、その眼差しからはただならぬ気配が漂っていた。ケンシロウは無言で龍之介に近づき、力強く言う。


「お前が探している巣穴の場所を知っている。だが、それはお前が思うほど簡単な場所じゃない」


 龍之介はその言葉に驚き、ケンシロウに続いて歩き出す。ケンシロウは伝説の戦士であり、ウィルスに侵された怪物たちを容赦なく倒す力を持つ男だ。しかし、その力を持ちながらも、彼自身の内面には深い孤独と悲しみがあった。


 二人は、次第に地下へと進んでいく。途中、ウィルスに感染した怪物が襲いかかってくるが、ケンシロウの驚異的な力で瞬く間に倒される。しかし、ウィルスの進行が進むにつれて、地下はますます腐敗し、気が滅入るような空気が支配していった。


 ついに二人は巣穴の入り口に到達する。そこには巨大なウィルスの塊のようなものがあり、無数の罹災者たちがその周りをうろついていた。巣穴の中には、ウィルスを生み出す源が眠っているという。その源を破壊しなければ、この世界は終わりを迎えるだろう。


 ケンシロウは龍之介に向かって言う。「俺が道を開ける。お前はその先に進め」


 ケンシロウが前に出ると、鬼気迫る戦いが始まる。龍之介はその戦いの隙間を縫って、巣穴の奥へと進んでいく。腐敗した空気と、怪物たちの呻き声が響く中、ついに彼はウィルスの源にたどり着く。


 しかし、その瞬間、龍之介はその源がかつての人間だったことに気づく。それは、かつてこの世界を支配していた科学者の姿をしていた。科学者は死んでいたが、その遺志がウィルスを引き起こし、この腐敗した世界を作り出したのだ。


 龍之介はナイフを握りしめ、涙を浮かべながらその者を討つ。ウィルスの源が破壊された瞬間、世界に変化が訪れる。しかし、その後には冷徹な静寂が広がっていた。ケンシロウはその戦いを終えた後、再び無言で歩き出す。


「もう終わりだな」と龍之介は呟くが、ケンシロウの表情には何も変わらない。二人は腐敗した都市を後にし、新たな未来を切り開くために歩き出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者龍之介 鷹山トシキ @1982

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る