幕間 ~『帝位返上 ★承徳視点』~
~『
そのため周囲から滅多に人前に姿を現さない皇子として知られていた。歴史ある行事にも欠席することが多く、それを嘆く声は少なからずあった。
『皇子としての自覚が足りない』
『影が薄い』
『この国の将来が不安になる』
そんな囁きが耳に届くこともあったが、
もし相応しい者がいるなら、次期皇帝の椅子を譲ってもいい。それは単なる謙遜や責任回避ではなく、本心からそう思えるほどに権力に興味がなかったのだ。
このような思想を持つに至ったのは、母親である皇后の影響が大きい。
『私たちは本物の皇族ではないの』
幼い頃から繰り返されてきた言葉だ。先代皇帝には男児がいなかったため、混乱を避けるために
だからこそ
敷き詰められた白い大理石の回廊を進み、宮殿の奥に進むと、扉の前に控える侍女たちが深く一礼する。
「皇后様がお待ちです」
扉が開かれると、
部屋の中央では皇后が椅子に腰掛けていた。
黄金に輝く髪がゆるやかな波を描き、青い瞳は深い湖を思わせるほど澄んでいる。見る者を引き込むような威厳を宿しながらも、
「会うのは久しぶりね。元気そうで何よりだわ」
「母上の方こそ……私を呼び出すとは珍しいね」
皇后は後宮を束ねる立場であり、その日々は多忙を極める。息子の顔を見るためだけに時間を作るとは思えない。目的を探るような視線を向けていると、皇后は笑みを深める。
「そう警戒しないで。呼び出したのは聞きたいことがあっただけだから」
「母上なら後宮で起きる出来事なら何でも把握しているだろうに……」
「たいていのことはね。でも知りたいのは、あなた自身のことだから」
「私の?」
「
皇后の言葉には鋭さが込められていた。
「……どういう意味かな?」
「そのままの意味よ。あの娘はね、私の恩人の関係者なの。その彼女を傷つけることがあれば、相手が息子でも容赦しないわよ」
「
意外な関係性を知り、
「私は誠実に生きてきた。それは母上も知っての通りだ。それに……
その低い声は静かでありながらも、内に秘めた感情が伝わるほどの力強さがあった。
一瞬の沈黙の後、皇后の口元がわずかに緩み、やがて穏やかな笑みへと変わる。その表情には母としての誇りが滲んでいた。
「さすが、私の息子。超が付くほどの大真面目ね」
皇后の声は微かに冗談めいていたが、それは決して皮肉ではなく、息子への深い信頼を示していた。
「もし
「他の誰でもない
その言葉を最後に皇后との面会は終わる。彼は部屋を退出し、一人残された皇后は静寂の中で小さく零す。
「
巡ってきた好機に皇后は頬を緩ませる。これからの未来を想像し、胸を踊らせるのだった。
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