第三章 ~『優遇された部屋』~
馬車がゆっくりと後宮の門前にたどり着く。
幾度も通ったことのある場所ではあるが、その威厳ある雰囲気にどうしても慣れることができなかった。
馬車から降り立った
「話は聞いている。正式な女官として働くんだってな」
「今日から同僚になるわけですね」
「よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「買手知ったる仲ではあるが、一応、俺も門番だ。積荷の確認はさせてもらうぜ」
「どうぞ。ただ馬車の中にシロ様がいるので気をつけてくださいね」
「シロ?」
「子供の狼です」
「許可は取っているのか?」
「いえ、ただ以前にも妲己様に頼まれて、連れてきたことがありますから。問題ないと思っていました」
「俺が非番の日だな……」
「まぁ、いいか。まだ子供だしな」
狼といえども、幼いその姿は愛嬌に溢れている。
それからも手際よく荷物の検査を始め、後宮に持ち込んで問題ないかを確認していく。
やがて、検査を終えて、
「問題なし。すべて持ち込み許可品の範囲内だ」
「なら通らせていただきますね」
「宿舎の場所は分かるのか?」
「いえ……」
「ついでだからな。案内してやる」
「良いのですか?」
「これから同僚になるんだ。遠慮するな」
「では、お言葉に甘えますね」
荷物を抱え、シロを連れた
敷地を進むごとに、荘厳な建物が次々と姿を現していき、しばらくして、ある一角で
「ここが
目の前に現れたのは、他の宿舎と比べて一際立派な建物だった。高くそびえる門に小さな中庭、屋根には装飾が施され、細部にまで気を配られていた。
「これほど立派な宿舎が用意されるとは思いませんでした」
「驚くのはまだ早い。中に入ればもっと驚くぞ」
廊下を進み、階段を登ると、重厚な扉の前に辿り着く。最上階の角部屋だった。
「ここが
部屋の中央には長机が置かれ、整然と筆や墨が並べられている。隅には寝台が置かれ、フカフカの寝具が敷かれていた。
「素敵な部屋ですね」
「この宿舎の中だと、一番人気の部屋だからな」
「もしかして妲己様が配慮してくれたのでしょうか?」
「贔屓ではないから、安心しろ。後宮では、一芸に秀でた者は他の女官よりも優遇されることが多くてな。画師としての才能を認められた結果、この部屋が割り当てられただけだ」
もちろん女官としての常識の範囲内ではあると、
「それと直属の上司は太妃様になるそうだ」
「それはありがたいですね」
口うるさい上役がいなければ、絵を描くことに専念できる。国で一番の画師になるという夢を追いかけるために最適な環境を妲己は用意してくれたのだ。
「高額の給金も出るし、羨ましくなる待遇だな」
「
「門番だからな。市井の男たちと比べれば恵まれているが、裕福とは程遠いな」
もっと出世したいと
(リア様も到着したようですね)
カナリアのリアは
リアは嬉しそうに
「
「どういうことだ?」
「実は怪しい男が外壁をよじ登ろうとしているようでして……これを阻止できれば、給料アップに繋がるのでは?」
「どうして怪しい男がいると分かったんだ?」
「それは……」
リアから聞いたと伝えても信じてもらえないだろう。答えに窮したまま、
「もしかして視力が良いのか?」
「は、はい、実はそうなんです」
「へぇ~、それは凄い特技だな……よし、
「楽しみにしています」
去っていく
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