第二章 ~『理不尽と権力者』~
「話は聞いている。婚姻届けを提出しに来た
「あなたは?」
「司礼の
その言葉には不愉快な響きが込められており、
「こちらが婚姻届けです。受け取ってくれますね?」
当初、兄に近しい立場の彼からは、同世代と結ばれて欲しいと婚姻を断られていた。
しかし
(ただ根回しされているとのことでしたから、この婚姻届けが通るかどうか……)
「残念だが、これは受け取れんな」
「どうしてですか?」
「この李明という男、領主経験がないではないかっ」
「ですが優秀な方です」
「平民の中ではそうなのかもな。だが我ら後宮はより相応しい者を用意してある」
「……
「知っていたのなら話が早い。
「そんな横暴な……」
「
「……どうしてあいつの名前が出てくる?」
「
「あいつは不在だ。それに、本件の担当は俺だ。その俺の判断が不服だというのなら、いくらでも不満を口にすればいい。この決定は後宮全体の総意だから覆ることはない」
その言葉に
妲己は華麗な衣装を纏い、ゆっくりとした歩みで
「話は聞いていたわ。それで、、
「そ、それは、その……」
言い淀む
「司礼長はいるかしら!」
「は、はい」
「太妃様、このような場所にお越しいただいて恐れ入ります……それで本日はどのような御用で?」
「
その言葉を受けた
「あ、あの、その……」
唇を震わせる
「どうかお許しください、 太妃様!」
だが謝罪に妲己の心は揺るがない。
「私に謝るの?」
冷ややかな対応に、
「大変なご無礼をお許しください。どうか、この愚か者に寛大なお心を!」
「もう結構です。あなたを許します」
「妲己様に助けられましたね。おかげで
「役に立てたなら何よりね……それと、この件に関して実はあなたに朗報があるの。焦って結婚しなくても良くなる方法を見つけたの」
付いてきて欲しいと妲己に促され、
扉の奥の部屋は柔らかな光に包まれて、香が漂っていた。そして室内には、一人の若い男が佇んでおり、
「
「久しぶりだね、姉さん」
幼い頃の面影を残しつつも、その姿は記憶よりも一層たくましく成長していた。
鍛え抜かれた筋肉質な肉体に加え、背も高くなっている。聡明な顔つきは変わらず、端正な目元には知性が宿っていた。
「心配したのですよ……っ……」
「今までどこで何をしていたのですか?」
「しばらく記憶を失っていてね。戦場にいたんだ……でも太妃様のおかげで、こうして無事に戻ってこれた。もう姉さんが重責を背負う必要もなくなったんだ」
事情は妲己から聞いているのだろう。彼はすべてを知っているとでも言わんばかりに柔和な笑みを浮かべる。
「僕が領主になる。だから無理に結婚相手を探す必要もない。これからはすべて僕に任せて欲しい」
「これで、問題解決ね」
妲己が微笑みながら、静かに言葉を添える。彼女が取り計らってくれたからこそ弟と再会できたのだ。
「妲己様、弟を見つけていただいて、本当にありがとうございました」
「私と
妲己の視線は柔らかく、
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