2024.12.26. 15:00

 私達はきょーじゅの車に乗って、メモに書かれた住所に向かった。

 そこは、家からも近い総合病院だった。


「着いた。そんなに遠くないね」

「……きょーじゅ、行こう」


 のろのろと車を降りるきょーじゅを急かし、私達は病院に入った。

 ロビーは以外にも、混んでいた。中には怪我や病気が見受けられない人もいる。


「受付はこちらでーす」


 私がぼーっと眺めていると、受付のお姉さんに声をかけられた。

 私達は駆け足で受付に向かった。


「すみません、政哉……公園で倒れていた少年っていますか?」

「ええ、いますけど……お知り合いですか?」

「あっ、えっと、多分私の息子です」

「え、息子?」


 お姉さんは驚いた顔をして繰り返した。

 そりゃそうだ。身元不明で送られてきた少年の母親が、連絡もなしに突然訪問したら驚くだろう。


「その、まだ確証は持ててなくて。だから、顔を見たくて……」

「……そうですか、えぇっと、彼は413号室にいます。どうぞお通り下さい」


 お姉さんに疑いの目を向けられながら、私達はロビーを後にした。



 413号室のドアには、『セイヤ様』と書かれた表札がかかっていた。

 私がノックをすると、中から返事が返ってきた。


「失礼します……」


 中にいた看護師さんは見知らぬ顔の私達をみて固まっていた。


「えっ? だ、ど、どちら様……?」

「すみません、この少年の母親とその友達です。ニュースを見て、慌てて探しに来ました」

「政哉っ……!」


 説明はきょーじゅがしてくれていたので、私は構わずベットに横たわる少年に駆け寄った。

 少年の顔には、白い布が乗せられていた。

 私は白い布を避け、顔を覗き込んだ。


「せ、政哉……」


 少年の顔は、明らかに政哉だった。

 しかし顔は青白く、息をしていない。


「生きてるよね? ねえ、ねえってば!」


 いくら呼んでも、政哉は反応しない。


「奥様、セイヤ様はもう、帰らぬ人となっています。なので、安静にしてあげ―――」

「政哉あああああ!!」


 私は看護師の言葉を遮り、泣き叫んだ。


「なんで、なんで消えちゃったの!? 毎日楽しそうにしてたのに!! 弟妹たちのこと好きだったんじゃないの!?」


 私は周りの視線など気にせずに、少年のベットに伏せ、泣き叫び続ける。


「何がダメだったの!? 父さんが死んだから!? 父さんがいなくても強く生きようって言ったの、あなたじゃない!!」

「マリ……」


 きょーじゅが私を後ろから抱きしめてきた。


「……?」

「マリ、あたし、絶対突き止めるよ、息子くんのこと。絶対、ただ死んだんじゃないと思うから」

「っ!」


 私は顔を上げ、振り向いた。

 きょーじゅは、強い眼差しで私を見た。


「あの……、実はセイヤ様のポケットに、こんなものが入っていまして……」


 そばいにた看護師が、遠慮がちに私達に何かを渡してきた。

 それは、一枚の手紙だった。


「……遺書、だと思われます」


 看護師の言葉に、私は急いでその手紙を広げた。


『家族のことが大好きだよ。

 増悪な人って、世の中にいるよね。実は……

 クリスマスパーティーの日、そいつがいたんだ。

 ハッとして、すぐ家族を守らなきゃって思った。

 きっと、この手紙を読んでるなら助けれたよね。

 ラーメンくらい、食べておけばよかったなあ。

 今、めっちゃお腹空いてるんだよね。

 さよなら  政哉』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る