白の嘘

カボチャ

2024.12.24. 23:00

 クリスマスパーティーをしている家族を横目に、俺はリビングを後にした。

 そして静かに玄関に向かう。

 夏用のスニーカーを履き、戸を開けると、白銀の世界が広がっていた。

 空からは大きめの雪がパラパラと舞っている。


「……さよなら」


 俺は振り返り、廊下に向かって小声でそう呟いた。

 しかし、リビングでわちゃわちゃしている家族には届かない。

 外に出ると、吐く息が白くなり、ジャンバーも着ていない俺はブルブルと震え始めた。

 ここまで冷えていると、野宿でもしたら死んでしまいそうだ。

 震える足で、我が家から離れる。

 始めはチラチラと我が家の窓を気にしながら歩いていたが、50メートルほど離れた頃から気にしなくなっていた。

 周りの視線を感じながら、俺は雪降る聖夜の町並みを歩く。

 23時を回っても、町にはカップルが溢れかえっていた。

 とても冬の夜の格好とは思えない俺を見て、リア充たちがひそひそ話をしている。


「ねえ、あの子ジャンバー着てないよ」

「うわマジだ。バカじゃねえの?」

「あれじゃない? 冬でも半袖短パンの小学生男子いるじゃん。あんな感じで……」


 あのー、全部聞こえてるんですけど。

 俺だって、バカでこの格好をして家を出たわけではない。

 とはいえ流石に視線が痛いので、俺はこのカップルだらけの場所から離れることにした。

 向かった先は、近所の公園。

 ブランコや滑り台など遊具が充実しているため、昼間は小さな子どもたちがわんさかいる場所だが、この時間になると人の気配さえ無かった。


 もう、ここで良いや、と思った。

 

 俺はブランコに腰掛け、空を見上げた。

 雪が舞っているのに、月がきれいに見えていた。半月よりちょっと欠けている。

 もはや寒さの感覚も無くなってきた俺は、なんだか眠くなってきていた。

 目を閉じ、ブランコの鎖に身を寄せる。

 これがきっと、最後の感情だ。


 ああ、良かった―――

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