正解のその後
さて。
日記は無事に見つかった。
ぼくが日記を渡そうとすると、
「あのね、広瀬くん」
見れば杜さんは喜々としぼくを見ていた。
「お礼にね、見ていいよ」
え……?
杜さんが続ける。
「見ていいよ、日記」
ぼくは驚いた。
まるでそんな流れになるなんて思ってもなかったのだ。
「え、いや、見ていいの?」
思わず聞き返したぼくに「うん、いいよ。探したお礼」と、制服のポケットから再びキャラメルを取り出し食べ始めた。
「……」
日記の中身、それが「気にならない」と言えば嘘になる。それに見ること自体がお礼ならここで見ないのは不義ではないだろうか?
ぼくは今一度辺りを見回した。
今、教室にいるのはぼくと杜さんだけ。
例え見たことがバレたとしても中を見るよう促した杜さんもきっと同罪。
それなら……見てみよう。
もしもこれが原因で杜さんがクラスで浮いてしまうことがあれば、その時はぼくがクモの糸を垂らす。絶対だ。
ああ、だからぼくが地に落ちたならどうか見捨てないでくれ。
そんな思いもほどほどに、ぼくは日記を……
開いた。
「え?」
そして理解する。
どうして、杜さんがここまでして日記を探していたのか。
どうして、日記の中身を「どうでもいい」と言ったのか。
どうして、日記を机の上に置き忘れたのか。
そして……。
どうして今、日記を見ることを許可したのか。
今ならわかる。
盗んだ男子生徒が日記を机に戻さなかった理由も。
それをぼくは何か突拍子のない出来事に遭遇したからだと思ったが……。
「なるほどね」
ぼくは笑った。笑うしかなかった。
「やられたよ。だから杜さんは日記を探したんだ」
手にした日記には……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます