箱のにゃか
とはいえ杜さん自身も四つ目は信じていないはず。
ぼくがそろりと目をやれば、杜さんは制服の内ポケットから黄色いキャラメルの箱を取り出していた。
杜さんはキャラメルの箱をスライドさせると、その中から一粒を取って包装を
口をもごもご動かす。
「……これは、からめる」
うん。説明されなくてもわかるよ。
あと、キャラメルね。
ぼくは頭の中を切り替えた。
「あー、それじゃあさ。杜さんが戻る前に手帳を窓から捨てたってのはどうかな?」
ここの教室は一階。一度日記を室内から出して後で回収。その後ゆっくり見るのも考えられる線だ。
しかし杜さん、それにはすぐに、
「そりゃあにゃいね」
と、口をもごもごさせながら否定した。
「いくら犯人でもそんな目立つ行動はしにゃいの。第一、誰かに拾われたらそれまで。それに窓の外から捨てたら傷が付く。日記を見ただけならプライバシーの侵害だけど、犯人も器物破損まではしにゃいはず」
確かに。
いざバレてしまった時のこと。中身を見ただけなら「ごめん」で済むかもしれないけど、傷物にしては謝るだけで済みそうにない。
それにそもそも次の登校日、杜さんが女子全員に今日の話をすればそれまで。
だから物理的に消したってのは無しだ。
「ふうん、そっか。それじゃあボディーチェックを掻い潜ったってのはどうかな?」
少し可愛い気もするけれど、舌足らずな杜さんには一切触れずにぼくは言う。
「日記をすべて破る。そして教科書やノートに破った日記を一ページずつ挟み込む。するとあら不思議。これなら杜さんの目も回避……」
言っていて、ぼくは自分の憶測が誤りだと気付いた。
何せ物自体の破損は先ほど否定したばかりだし、それに加えてぼくを見る杜さんの目がどうも冷たいのだ。
杜さんはいつの間にかキャラメルを飲み込んでいた。
「ねえ、広瀬くん、本気で言ってないよね?」
……さあて。どうかにゃ?
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