序列2432位から始める勇者奮闘記
お茶漬け
第1話
——数百年ほど前、魔王と呼ばれる絶大な力を持つ存在が現れた。世界を滅ぼさんとする彼の者を討つため、神に選ばれた一人の青年が立ち上がる。
勇者アルドレア。白銀の髪と瞳を持つ、光の力を司る剣士だ。
勇者アルドレアは清き心と、弱者に優しく悪を挫く、まこと正しき心の持ち主であった。
永き戦いの末、勇者アルドレアは魔王を討つことに成功した。世界に平和が訪れ、勇者アルドレアは、ルクサンド王国の姫と結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ。
……というのが、大昔に、幼い子供向けに脚色された表向きの冒険譚だ。実際のところ、勇者アルドレアにまつわるエピソードは、そんな清廉潔白なものではなかった。
まず、勇者アルドレアは酷い女たらしであったというのが現在の通説である。ルクサンド王国の姫と結婚したものの、複数人の妾をとり、更には彼女らも知らぬ複数の不倫相手が下町にいたとされる。
その上、関係を持った女性のほとんどが、勇者の子を身ごもっていたとされている。それ故に、勇者の血を引く子供が王国に溢れ返ってしまったというのが、この冒険譚の裏側に存在するエピソードだ。
そして、その結果起きてしまったこと。それは——勇者の血を色濃く継ぐ者たちが、今もまだ、この世界中に点在しているということ。勇者と同じく白銀の髪と瞳を持ち、神から与えられた、勇者にしか扱えないはずの光の力を操ることができる者たち。
彼らは魔王を討伐した勇者アルドレアの偉業のみにあやかり、自らもまた勇者を名乗っている。謂わば、職業として『勇者』が存在している世界。
かくいう僕も、そんな勇者の末裔……現在2435人が確認されている中で、序列2432位。圧倒的最底辺の勇者の一人である。
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