サブロウ・クエスト~いせかいへGO! めざせ、竜王の大地!

土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり)

第1話 旅のはじまり。

 マンガ家一色サブロウの事務所兼作業場であるオフィス・モノクロ。




34.49115861,136.70950595




「なんやねん、これ」


 〆切明けに、アシスタントのカズマが職場のオフィス・モノクロに来てみれば、肝心のサブロウの姿が見えず、上記の数字 をデカデカと書いたA4用紙がその机の上に置かれていた。


 とんとんとんとんとんとんとんとんとん


 オフィス・モノクロの2階の居室空間でサブロウと同棲しているやはりアシスタントのヨシノが、上背がある割りには軽やかな音で階段を下りてきた。


「あ、カズマさん。サブロウ先生見かけませんでしたか? 朝起きたらいつの間にかいなくなってて」


「いや、ボクも見てへんよ」


「おっかしいなあ。どこいったんだろ?」


「ちゃーす! あれどうしたの? 二人とも変な顔をして」


 もう一人のアシスタントのチカもオフィスに到着した。


「あんなあ、サブロウ先生センセがおらへんのやって」


「ええ、マジ? 今日こそ年末の慰安旅行の打合せするって言ってたよね? ってもうクリスマスなんだけど」


「電話にもでてくれないんです。いったいどうしちゃったんでしょう?」


「そういえば、サブロウ師匠、昨日変なコトいってたわよね」


「なんやったかいな」


「ほら、年末の慰安旅行の話が出たとき急に『オレは異世界旅行して竜王を見に行くぞ!』って言ってたじゃない」


「ああ、はいはいはい。そんなこともあったなあ」


「いつものことだけど、また変なこと言いだしたと思ってたんだけど。まさかねえ」


「本当に異世界へ行っちゃったんでしょうか!」


「それはありえないけど、どこかに出かけたのかも」


「せやなって、あああああ!」


「どうしたんです!」


「どしたのカズマ?」


「これ見てみ! 冷蔵庫の前にこんなメモが!」


〔MeはYouたちより一足先にいせかいにトラベルして、竜王を見に行くザンス、ベイベー!〕


「なんなの、この頭が悪い文面は! ルーとイヤミが同居してる」


「問題はそこちゃうって、サブロウ先生センセ、マジで仕事おっぽり出して旅行に行っとるんちゃうか!」


「ひどいです! わたしたちを置いて異世界に行くだなんて!」


「「いや、さすがに異世界はないわ!」」


「異世界はありえへんって。せいぜい、都会のアニメショップか何かでドラゴンのフィギュアを買いに行くくらいやないか?」


「それとも、ドラゴンが出てくるようなテーマパークかも。淡路島にある『ニジゲンノモリ』ならドラクエとかモンハンのドラゴンがいるはずだけど」


「どっちもおもしろそうだけど、でも、でも、サブロウ先生はどうして一人だけで行ってしまったんでしょうか」


 ヨシノはべそをかきながらつぶやいた。


「ヨシノさんを泣かすだなんて、これはもう、師匠を捕まえてこらしめる必要があるね」


「せやけど、肝心のセンセの居場所がわからんとこらしめようもないやん。こんなメッセージだけやと」


 カズマがさっきのメモを手にとってひらひらさせた。


「あ、カズマさん、そのうらになにか数字が書いてあります!」


「あ、ホンマや。なんや見たことのあるような数字やなあ」




34.49115861,136.70950595




「そう言えば、さっきセンセの机の上にもこんな数字が貼ってあったで! ちょっと待って、ホラこれ! 見てみ、まったく同じ数字や!」


「これって、わたしたちにその数字の謎を解けっていう挑戦状じゃないですか!」


「ありえるわね。あれ、こんな数字みたことあるような。ひょっとして緯度と経度で座標をしめしてるんじゃない?」


「ああ、なるほど!」


「チカ! あったまええな! ほな、その数字を検索したらなんかわかるかもな」


「じゃあ、検索してみましょ。淡路島かなあ?」


 三人はその数字を検索してみると……


「淡路島じゃないですね」


「なんでやねん、こんなとこになにがあるっちゅうんや」


「でも手がかりがそれしかないんだから、そこに行くしかないじゃない!こうなったらアタシたちもサブロウクエストに出発よ!」


「せやけど先立つものが……」


「ふふふ、こんな緊急事態用のオフィス・モノクロの法人カードがあるのよ。今回のサブロウ師匠の追跡費用は『取材費』ということで全部必要経費で落としてしまいます!」


「「おおー! ブラボー!」」


「師匠、待ってなさい。捕まえたら必要経費は個人の口座から3倍返ししてもらうわよ!」




つづく

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