【短編】魔法少女は辞められない〜スノードームの告白〜
水定ゆう
第1話 雪山に行こう
寒々とした空が続く。
晴天だったものは過去になる。
今は薄暗く、どんよりとした低い雲が連なり、電車の窓から窺えた。
「うわぁ、これ、大丈夫かな?」
サクラは不安だった。
今日はスキーをするために、いつもの四人と一緒。
これじゃあ計画が潰れてしまうかもしれない。
「大丈夫だぜ、なんならあたしが溶かしてやるよ!」
「溶かしたらダメです、姉さん」
隣に横並びに座る少女達。
ヒマワリとツキカは冗談にもならない話をする。
実際、ヒマワリなら本当に溶かしてしまうから、止めてほしい。
「まあ大丈夫ですね」
「ポプラさん、どうしてそう思うんですか?」
「この後、雪は降りません」
ポプラには時計の針が見えていた。
これから先、しばらくは雪が降らない。
それを確信しているので、サクラ達も安心する。
「よかったです(ふぅ)」
「って言うかさ、セッカはセッカは!」
「そうですよ。セッカさんがいなければ、スキーもスノーボードもできませんよ?」
セッカはサクラ達と同級生だ。
そして同じような力を持っている。
名前の通り、雪に関係している。そのおかげか、昔からスキーとかスノボーが得意だった。
今回もセッカに教わる予定だった。
しかもセッカがこの冬の間、毎年足を運んでアルバイトしているスキー場があるらしい。
今日から三日間、所謂スキー旅行だ。
だからこそ、ここにセッカがいないのは不安で仕方ない。
「大丈夫だよ。多分、先に行って待ってくれてるんじゃないかな?」
「だといいけどな」
セッカに限って約束をすっぽかすなんてあり得ない。
サクラはそう信じると、電車にガタンゴトンと揺られた。
確かもう少し、後一時間の道のりだ。本当に長い長い道中、人里離れた雪山に、サクラ達四人“魔法少女”は向かった。
「で、来てみたはいいものの」
サクラ達は電車を降りた。
最寄駅のすぐ近くにはバス停がある。
「誰もいない」
「ったくよ、セッカの奴なにしてんだ」
しかしセッカの姿はない。代わりに目の前に雪山が聳える。
白く染め上げられた偉大な山だ。
何処となく目を惹きつけられた。
「大きな雪山ね」
「そうみたいです。うーん……怖い」
正直な感想は怖い。雪山なんて、絶対に恐ろしいものがある。
だけど今回は名コーチがいる。
セッカがいればなんとかなると思ったけど、ここにも迎えに来てくれてないのは、少し不気味だ。
「しかもスキー客、他にいないですよ」
「そうね。なにかあったのかしら?」
「な、なにかってなんですか!?」
「それは分からないわ。でも、よくないことではありそうよ」
ポプラの目には何が映っているのか分からない。
だけど油断しちゃダメだ。
この先は自然の領域。どんな化け物が潜んでいるかも分からないから、いつでも魔法を唱えられるようにしておいた。
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