部屋に出るようになった

第1話

「最悪だ」

　早朝、帰宅した私は玄関で固まっていた。

　一ヶ月前から部屋に自分以外の気配を感じるようになった。

　ここには独りで住んでいて家族も居ないはずなのにである。

　紹介されたときは前の住人はここに数年問題なく過ごせたって言っていたし、御祓いされるようなことだってないって言っていたのに。

　私が住むときに限ってそうなのだ。

　なんというか、私が引き寄せやすい体質なのかもしれない。

　そういう、オーラがあるのか、逆にオーラがないから引き寄せるのか。

「はぁ～」

　大きくため息を付く。

　前にもこういうことがあった。

　閑静な住宅街にあって住みやすい、いい場所だったのに、一年も住まないうちにソレが出てきたのだ。

　最初は私の気のせいだと思っていたのだが、次第に無視できなくなっていった。

　それでも、害がないのだから気にすまいと思って耐えた。

　結果、ソレとは数ヶ月も同居するはめになった。

　それでも、耐えたのだ。

　だが、ついには赤ちゃんの声まで聞こえてきて、最後は逃げるように出て行くことになった

　そして、先ほど、この部屋でもついにソレを見てしまった。

「やっぱり、生きた人間が住み着いてたよ･･････」

　また、引っ越さないと駄目だろうか。

　早く、出て行ってくれないかな。