第25話 模様替え
「シトラ!ただいま!!」
「おかえり。どこ行ってたの?」
「中心の方!これ、お土産!」
レリアは両手に持った荷物を自慢する様にシトラに見せる。
「……あぁ、あの辺りの。レリアはああいう所の方が好き?」
「う〜ん……あんまり高級そうな所よりかは、あっちの方が好きかな。シトラが楽しめるのが一番だけどね!」
「そう。わかった、考えとく。とりあえず、家入ろっか。何買ったか見せてよ。」
「うん!シトラが喜びそうな物もいっぱい買ったよ!」
レリアとシトラは横並びになって家に入り、そのまま自室へと戻った。
「……じゃん!なんか置き物!かわいいでしょ!」
レリアは袋の中から猫の形をした置き物を取り出す。
「……かわいい。」
「でしょ?一目惚れして買っちゃった!他にも〜おっきいぬいぐるみに色んな本!観葉植物も!」
レリアは次々と袋の中から取り出し、シトラに見せていく。
「どこに置くか考えないとね。……書斎に置くのも良いかも。」
「書斎!とっても良いかも!!……あっそれならこれ!かわいいペンもあったから買ってきたの!」
「良いね。学園でも使えそう。……これは?」
シトラはレリアがまだ開けていない袋を指差す。
「それ?それはね〜はい!指輪!あんまり高いものじゃないけど、お揃いが欲しいなぁ……って思って!二つあるんだ!」
レリアは指輪を手に取り、左手の薬指に嵌める。
「そういえば私達婚約してるし、ちょうど良いね!」
レリアはにこやかにそう言う。
シトラは少し照れて、若干顔を赤くさせながら指輪を手に取り、レリアと同じ指に嵌める。
「うん!シトラに似合ってる!……えへへ、何だかこういうのって良いね。」
「……そうだね。……今度は、私にプレゼントさせて。」
「うん!シトラのプレゼントも待ってるね!」
シトラは自分の薬指にある指輪をしきりに眺めて、少し微笑む。
「そういえば、シトラは明日も学園?」
「うん。……休もうと思えば休めるけど。」
「いや、休まなくて良いよ!ただ確認したかっただけ。でも、シトラって普段どんな感じで過ごしてるの?」
「普段……別に、授業を受けてるだけ。」
「友達と話したりとかはしないの?」
「……そういうの、居ないから。」
「そ、そっか……。えっと、なんか話す人とかは?」
「話す人……話しかけてくる人ならいっぱい居る。」
「おっ!どんな人!?」
「どんな……口を開けば婚約しようだとか、魔法を教えてだとか、そんな奴ばっかり。」
シトラは辟易した様子でそう口にする。
「うへぇ……シトラ、大変だね……。」
「別に。もう慣れた。それに……もうレリアと婚約出来たし。」
シトラは軽く指輪を撫でる。
「えへへ、婚約……そういえばシトラ、婚約ってまだあんまりよく分かってないんだけど、何かしないといけない事とかあるの?」
「いや、特にないよ。……面倒なパーティとかはあるかも。私が守るから安心して。」
「パーティに行けるの!?」
レリアは目を輝かせて、シトラに顔を近づける。
「そんな楽しい物じゃないよ。……本当に。」
「でも、パーティだったら豪華な食べ物とか、なんか面白いもの見れたりするんじゃないの?」
「……それの五倍ぐらいつまらない時間があるよ。」
「そんな……えっと、じゃあシトラに任せる!」
「うん。任せて。レリアには指一本触れさせないから。」
会話が一段落して、レリアは買ってきた物を手に取って眺める。
シトラも観葉植物などを手に取って、部屋の何処に置こうか考え出す。
メイドが食事の時間を告げに来るまで、二人はそうして過ごしていた。
「やっぱりここのご飯は美味しいね!今日も色々食べたけど、家が一番かも!」
「そう?料理長にも伝えとくね。」
「うん!伝えといて!……という訳で!お土産を部屋に飾っちゃおう!」
「ある程度場所は決めた。実際に置いて決めていこうか。」
「うん!そうしよう!」
二人は続々と物を置いていく。
机には置き物、ベッドにはぬいぐるみ、そういう風に置いていき、ものの数分で部屋の様相はかなり変わった。
「これはここで……よしっ!良い感じじゃない?」
シトラは部屋を見渡す。
「……うん。前よりかなり良い感じの部屋になった。」
「だよね!……でも、こうなると他にも色々欲しいかも……シトラ!今度また一緒に買い物行かない?」
「良いね。行こう。壁の方とかもっと色々置きたいし。」
レリアも部屋全体を見て、何が欲しいか考える。
「もっと大きい植物とかも欲しいね。……でも、持って帰るのが大変かな。」
「魔道具に良いのがあるよ。何なら持ってるし。」
「ほんと!?じゃあ他にも大きい物いけるんだ!何が良いかなぁ……。」
レリアが部屋に置くものについて考えている間、シトラは別のことを考えていた。
レリアへのプレゼントをどうするのか、について。
何かアクセサリーをプレゼントするのか、あるいは食べ物か、刀とかも良いかもしれない。シトラは悩んでいた。
「ねぇ、レリア。何か欲しいものとかある?部屋に置くものとかじゃなくて。」
「欲しいもの?う〜ん……特に思い浮かばないかなぁ。なんというか、今が幸せすぎて!」
「……そう。」
レリアに今が幸せ、と言われシトラは思わず口角を緩ませる。
しかし、同時に欲しいものがないとも言われ、シトラは困った。
「……さて、模様替えも終わったし……先お風呂貰っても良い?」
「良いよ。行ってらっしゃい。」
「うん!行ってきます!」
レリアはさっと風呂の用意を済ませ、部屋から出ていく。
シトラはプレゼントをどうするかについては一旦置いておくことにした。
レリアが風呂から戻ると、入れ替わる様にシトラが風呂に向かう。
レリアは一足先に寝る準備をし、ベッドに倒れ込む。
少しひんやりとしたベッドはレリアの眠気を誘い、そのままレリアはシトラが戻って来る前に眠りについた。
風呂から戻ったシトラは、ベッドの上で寝息を立てるレリアを見る。
シトラは軽くため息をついた後、レリアの寝顔にキスをして、そのまま隣で眠った。
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