想い出の人

天川裕司

想い出の人

タイトル:想い出の人



▼登場人物

●巣牟木 国雄(すむき くにお):男性。45歳。独身サラリーマン。奥手。結婚を諦め掛けて居る。

●若菜流絵(わかな るえ):女性。30~40代。国雄の夢と欲望から生まれた生霊。

●葉末冷子(はずえ れいこ):女性。享年27歳。国雄が昔、本を通して出逢って居た人。


▼場所設定

●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。国雄と流絵の行きつけ。

●国雄の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。


▼アイテム

●Fulfillment of love in reality:流絵が国雄に勧める特製のサプリドリンク。これを飲むと現実での恋愛に覇気を持てる。でも一般の人にしか効果は無い。

●Fulfillment of past relationships:流絵が国雄に勧める特製のサプリドリンク。これを飲むと夢が叶う。でもデメリットもあり。


NAは巣牟木 国雄でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは心に思う人に出会った事がありますか?

心に思う人…曖昧な響きで、ピンとこないかもしれませんね。

でもそう言う人と言うのは得てして、記憶の中に居たりするものです。

今回はそんな人に出会ってしまい、信じられない結末を迎えてしまった

ある男性にまつわる不思議なお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈カクテルバー〉


国雄「はぁ。俺の人生、やっぱり独身で終わるのかなぁ…」


俺の名前は巣牟木 国雄(すむき くにお)

今年で45歳になる独身サラリーマン。

もう長らく女との付き合いは無い。


それどころか俺は奥手な性格で、ずっとこのままの状態が続けば

おそらく独身で生涯を終えてしまう。


まぁそれでも良いと何度か覚悟はしたのだが、

やっぱり人間としての、男としての未練があるのだろうか。


できれば想う人と付き合いたい。その人と恋愛し結婚したい。

それから家庭を持って子供も持って、幸せな人生を歩めれば。


そんなことをブツブツ呟きながら思っていた時…


流絵「フフ、こんばんは♪お1人ですか?よければご一緒しませんか?」


と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は若菜流絵(わかな るえ)さん。

都内で恋愛コーチやスピリチュアルヒーラーの仕事をしていたようで、

どことなく上品な上、一緒に居ると落ち着く人だった。


国雄「あ、どうぞ…」


まさかこんな俺に声をかけてくる女が居たとは。

少し嬉しくなって暫く談笑していると、また不思議に気づく。


何か彼女が昔から一緒に居た人のように思え、その上で心が開放的になり、

なんだか今の自分の悩みを全部解決して欲しい…そんな気持ちにさせられる。


国雄「いや、お恥ずかしい。初対面のあなたにこんな話をしてしまって」


流絵「いいえ、よくお悩みを打ち明けて下さいました。そう言う方をお助けするのが私のお仕事ですから♪」


そして3つ目の不思議は、そんな彼女に対し、何の恋愛感情もわかなかったこと。


流絵「こちらをどうぞ♪これは『Fulfillment of love in reality』と言う特製のサプリメントドリンクで、これを飲めばきっと恋愛に対して積極的になれ、今のお悩みを少し解消できるかもしれません」


そんなこと絶対信じないのに、彼女に言われると信じてしまう。これも不思議だった。


流絵「でも良いですか?そのドリンクは飽くまで一般の方に通用するもので、あなたのようにひどく落ち込まれている方にはもしかすると効き目がないかもしれません」


ト書き〈数日後〉


あのとき流絵が言った通り、俺には全く効き目がなかった。

いや1つだけ変わったのは、ある女性が俺に告白してくれたこと。

会社の部下の女だったが、俺に告白し、それから少しだけ付き合った。


でも彼女の狙いは俺の金だったようで、目的が済めば…


彼女「ごめんなさい。やっぱり私まだ…」


なんて殊勝な顔して俺の元を去ったが、その翌日にはもう別の男の所に転がり込んでいた。

物珍しさで、初めからちょっと腰掛け程度に俺に近づき、

ある程度満足すればその勢いでまた去ってゆく。


実はこれまで、数人の女と付き合ってはきたが、

みんな浮気と言う置き土産を残し俺の元を去っていた。


そして俺はいちど、この世の中に絶望したのだ。女に対して絶望していた。

その時の自分を思い出し、俺は更に拍車がかかるようにして、また絶望を思ってしまった。


ト書き〈自宅〉


そして、それからわずか数日後のこと。


国雄「え?あ、あなたは…」


流絵「フフ、お邪魔じゃなかったかしら?少し上がっても良いですか?」


なんと、俺の自宅にあの時カクテルバーで会った彼女・流絵さんがやって来たのだ。


何を思ってきたのかよくわからなかったが、それでもまた不思議。

そこまでして俺に会いに来てくれたこの彼女に対し、

俺はやっぱり一片の恋愛感情すら覚えなかった。


それどころかまた今のこの悩みをどうにかしてほしい!

この絶望を拭い去ってほしい!なんで思いで彼女に無心していた。


すると彼女は又あの時のように、バッグから栄養ドリンクを1本取り出しそれを俺に勧めてきてこう言った。


流絵「仕方がありませんね。やっぱりダメでしたか。それではこちらをどうぞ。これは『Fulfillment of past relationships』と言うまた特製のドリンクでして、これを飲めばあなたの願い・夢は叶えられます」


国雄「え?」


流絵「但し、良いですか?あなたはおそらく素敵な女性に巡り会えますが、その女性とはプラトニックな恋愛に留め、決して俗世間で普通のカップルが営むような体の交流は持たないようにして下さい」


ト書き〈数日後〉


それから数日後、流絵さんの言った事は本当に成った。


国雄「なんて美しい人なんだ…。でも彼女、どっかでいちど会ったことがあるような…」


そんな人に俺は出会う事ができ、その彼女と本当にプラトニックな恋愛をスタートさせた。


まさかこの歳で、こんなに恋愛がやってくるなんて。

それに浮かれていた自分もあったのだろう。


新しく出会った彼女は葉末冷子(はずえ れいこ)さんと言い、

気品が漂い美しく、街を歩けば誰もが振り返るようなそれ程の美人。

でもどこかで見た事がある…と言うか、長年一緒に連れ添った事がある。

そんな妙な感想も一緒に湧き上がる。


そんな彼女とのプラトニックな恋愛。…プラトニック…

俺はもう我慢ができなくなった。男として当たり前の事。


ト書き〈デート〉


冷子「あっ、国雄さん!やめて、ダメです」


国雄「なんでだよ!俺たち付き合ってんだから良いだろ!?」


そしてある日のデートの時、俺は彼女に迫った。

でも3度目に抱きつこうとした時、彼女の体は消えてしまった。


国雄「え?!れ、冷子!?おい冷子、どこだよ!」


どこにも居ない。さっきまで2人で居たホテルの部屋がしぃんと静まり返ったその直後、物陰から代わりにあの女が現れた。


国雄「あっ!あんたは?!」


もうはっきり言って恐怖した。なぜこの人がこんな所に!?


流絵「フフ、こんばんは♪最近よくお会いしますね。…でも国雄さん、アナタ、私との約束を今破りましたね?」


国雄「…え?」


流絵「あれほど新しく出会った彼女・冷子さんとは、プラトニックな恋愛に留めるようにと言っておいたのに」


国雄「…な、なんですか、あんた…」


妙な恐怖で口がうまく回らない。


流絵「残念です。あなたには責任を取って頂きます。それ程あの彼女の事が好きでしたなら、今、彼女が居る所にあなたも行きなさい」


そう言って流絵がパチンと指を鳴らした瞬間、俺の意識は飛んでしまった。


ト書き〈雑誌を読みながら本の中の住人になった国雄を見て〉


流絵「フフ、2人で一緒に楽しそうに肩を寄せ合って、並んで座ってるわね。葉末冷子はその昔、ちょっといかがわしい本にレギュラー出演していたその彼女。いわゆるアッチ系の女優だったのよ」


流絵「国雄が懐かしく感じたのは、その昔、彼女が活躍していたその時期に、本を通して出会っていたから。昔お世話になっていたその感覚で『いちど出会った事のある人』なんて、懐かしく思えていたのよ」


流絵「でも彼女は現役から引退したその直後、すぐに持病が悪化して他界していた。引退理由はそれ。その彼女を追った国雄が今いる所は…」


流絵「そして私は国雄の夢と欲望から生まれた生霊。何とか現実で理想を掴んで欲しかったけど無理だったわね。まぁこの本を土台にした思い出の中で、2人一緒にいつまでも幸せにね…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Faud86EqcCQ

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