ありもしないグリム童話

星と銀貨

　皆さんは星と銀貨という物語を知っているでしょうか。グリム童話に出てくるお話の一つです。これから語るのはそんなグリム童話を改訂したもの。優しさを教えるのではなく、やさしさがなんなのかを考えてもらう物語。

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　＜神の前に正直な少女＞

　昔、一人の女の子がいました。その子はとても貧しく、しかし心優しい子でした。しかし、両親が早々に亡くなってしまった彼女に、最後に残ったのは身につけたボロ着にパンの半切れだけ。だけれど彼女の心は穏やかでした。神様を信じていれば、助けてもらえると信じていたから。

　そこで、歩いていると、そこへ貧乏な男が現れます。

「とにかく腹が減っているんだ、何かくれ」

　男はそう言いました。そして、女の子は手に持っていたパンをすべてを男にあげてしまいます。そして「どうか、神様のお恵みがありますように」と祈ってあげるのでした。

　また少し歩いていくと、今度は子どもが泣いています。

「頭が寒くて、寒くて死にそう」

　子供はそう言いながら泣いています。女の子はかぶっていた頭巾を子どもにやりました。

　また少し歩いていくと、今度は何も服を身に着けていない子どもが震えていました。女の子は自分の上着を脱ぐと、その子に着せてあげました。また少し歩いていくと、次に出てきた子どもはスカートが欲しいと言うので、女の子はスカートを脱いであげました。

　ようやく森に着くと、また子どもが出てきて、今度は肌着をちょうだい、とねだります。女の子は、もう暗いし誰にも見えないでしょう、と自分の肌着をあげ、裸になってしまいます。

　そして女の子は持っているものを全て無くしてしまいます。ですがまだ、女の子の心は満ち足りていました。神様は見ていると信じていたから。

　すると、高い空の上からお星さまがパラパラと落ちてきました。よく見ると、それは白銀色に光るターレル銀貨でした。そして、たった今、肌着をやってしまったというのに、気づくと上質の肌着を着ているではありませんか。それだけではなく上質で、真っ白なドレスも身に纏っています。

　女の子は銀貨をすべて拾い集め、一生豊かに暮らすことができました。

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　＜自分に正直な少女＞

　昔、一人の女の子がいました。その子は一人目の少女の噂を聞いて、一生豊かに暮らせるようになった彼女を羨んでいました。そして自分がもし同じことになったら彼女のように振る舞おうと決めていました。

　その後間も無くして女の子の両親は離婚し、家族に捨てられてしまいます。彼女の元に残ったのは身につけたボロ着にパンの半切れだけ。

　だけれど彼女は悲しむどころか、その時は喜んでいました。

　そこで、歩いていると、そこへ貧乏な男が現れます。

「とにかく腹が減っているんだ、何かくれ」

　男はそう言いました。そして、女の子は手に持っていたパンをすべてを男にあげてしまいます。だけれど少女は失った気はしなかったのです。この後、その何倍ものパンをもらえると信じていたから。

　また少し歩いていくと、今度は子どもが泣いています。

「頭が寒くて、寒くて死にそう」

　子供はそう言いながら泣いています。女の子はかぶっていた頭巾を子どもにやりました。

　また少し歩いていくと、今度は何も服を身に着けていない子どもが震えていました。女の子は自分の上着を脱ぐと、その子に着せてあげました。また少し歩いていくと、次に出てきた子どもはスカートが欲しいと言うので、女の子はスカートを脱いであげました。

　ようやく森に着くと、また子どもが出てきて、今度は肌着をちょうだい、とねだります。女の子は、恥じらう気持ちもなく、彼女に肌着を分け与えます。

　そして女の子は持っているものを全て無くしてしまいます。ですがまだ、女の子の心は満ち足りていました。むしろ最初の時より満ち足りていたことまであります。

　すると、彼女の予想通り高い空の上からお星さまがパラパラと落ちてきました。それは白銀色に光るターレル銀貨でした。そして、上質の肌着を着ているではありませんか。それだけではなく上質の真紅のドレスも身に纏っています。

　彼女も同じように銀貨をすべて拾い集め、一生豊かに暮らすことができたのでした。

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＜現実に正直な少女＞

　昔、一人の裕福な女の子がいました。恵まれていたその子は一人目の少女と二人目の少女の噂を聞いて、一生豊かに暮らせるようになった彼女を羨むことはありませんでした。むしろ彼女はその女の子たちを卑しいな、と思っていました。そして自分がもし同じことになってもそんなことはしないと考えたのです。

　その後、間も無くして女の子の両親は離婚し、家族に捨てられてしまいます。彼女の元に残ったのは身につけたボロ着にパンの半切れだけ。その自分の様子に既視感を覚えながらも街中を歩いていました。するとそこへ貧乏な男が現れます。

「とにかく腹が減っているんだ、何かくれ」

　だけれど彼女はこういうのです。

「ダメよ。これは私が食べる。私も頑張って生きるからあなたも頑張って」

　また少し歩いていくと、今度は子どもが泣いています。

「頭が寒くて、寒くて死にそう」

　子供はそう言いながら泣いています。

　しかし彼女は同じく慰めるだけでした。子供に帽子をあげてしまったら自分が寒くなってしまうからです。

　また少し歩いていくと、今度は何も服を身に着けていない子どもが震えていました。次に出てきた子どもはスカートが欲しいと言います。彼女はどちらも素通りしました。

　きたことのないような森にまで歩いてくると、また子どもが出てきて、今度は肌着をちょうだい、とねだります。女の子は、恥じらってしまい、それを断ります。

　そして少女は半分だけのパンとボロ布のような服のまま森の奥に歩いて行きます。そして、ある大きな木の元に辿り着いた時でした。彼女は木の根の間に洞があることに気づいたのです。その洞の中には金銀財宝の入っている宝箱があったのです。彼女はそれを使って一生生きても使いきれないようなお金を手に入れました。

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彼女たちの生き方はどれが正しいのでしょうか。どの方法が一番なのでしょうか？