ホーセズネック ヴァンパイア
@IgaueS
#0 Fallen Angel
一目惚れだった……彼を一目見た瞬間、これは運命の巡り合わせだと確信した
雨降る夜に震えた彼を介抱したのが私の人生初にして、最後の恋の始まり……
どんな弊害が立ち塞がろうと、この恋だけは実らせると決めたあの日――
だけど、壁は余りにも大きかった
彼には恋人が居たのだ
それも雪の様に白い肌、
絶世の美女、写真の中に写る
その女が憎かった、羨ましかった……だけど、それと同時に彼の隣に立つ資格の無い自分も恨んだ……
そんなある日、一通の電報が入る
私は誰からだろうとその電報を読み、言葉を一瞬失った――
彼からのディナーのお誘い、私は背伸びして高めの赤いドレスを着込み、彼とのディナーに臨んだ
しかし、それが地獄への片道切符だったとは当時の私には知る由も無かった……
ニューヨークの夜景をバックに運ばれてくる絵画の様な料理に舌鼓を打ち、彼との他愛も無い会話を楽しむ最高の時間――
そんな中、彼は私に信じられ無い事を話した
「俺の恋人は化け物なんだ――」
最初は自身の耳を疑ったが、彼の瞳を見る限り嘘では無いと確信した
ヴァンパイア……血の気の引いた白い肌に獣の様に鋭い牙を持つ、獲物の血を吸って生き永らえる不老不死の化け物――自分の恋人がそんな化け物なんだと私に打ち明けた彼の首元には鋭い針で刺された様な痛々しい歯型……
そして帰り際、彼が私に言った
「あの化け物の事を……忘れさせてくれ――」
私は……あの時この言葉を断るべきだったのかもしれない。だけど今となってはもう取り返しは付かなく、過ぎ去った時間が戻る事は無い……
私は、彼に連れられ近くのホテルの中へと入っていった
その夜の事は数年経った今でも鮮明に覚えている
彼の温もり、体中を駆け巡るこれ以上に無い程の快楽……まるで夢の様だった
しかし、そんな私の夢は部屋の扉が開く音によって終わりを迎えた
「……!」
ルビーの様な瞳が私達を見つめていた
「い…嫌……!!」
その瞳はゆっくりと此方に近づき、黒曜石の様に黒く光る爪が彼の首を突き刺した
「マ……リィィィ……」
「……!!」
私の顔に生暖かい何かが垂れてくる
「そんな……!!」
次は私の番、この化け物から逃れる事は出来ない
「嫌…!死にたく無い……!!」
足音が段々と近付いてくる
「誰か!!誰か助けて!!!」
逃れられない
ルビーの様に光る、あの瞳から――
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