まっすぐ弓を引いて 〜それから〜
暁流多 利他
秋
柘榴が秋に実ることを、俺は高校一年生になって初めて知った。割れて中身の零れた、真っ赤な実は辺りに血飛沫の如く散らばっている。艶のある柘榴の実は、光が透き通ってルビーのように輝いていた。
風が木の葉を揺らし、慰めるように頬を撫でる。
俺は県大会に出場して、敗退した。
そのことを不意に思い出す。
木漏れ日がチラチラと泳いだ。
――しかたがない。まだ初めて一年も経っていない。
それに、二度目の大会だったし、高校から初めた身としては上出来だと思う。
だけど全国大会に出たやつの一人は、俺と同じ高校から弓道を初めたやつだった。俺のすぐ近くで。
――仕方ない、じゃない。
仕方ないと思った自分を心の底から恥じた。
仕方ない、なんて一言は、自分の悔しさからただ逃げただけだ。
沈みそうになる心を頭を、持ち上げることで奮い立たせる。落ち込むのはだめだ。なんの意味もない。
――俺がやることは、弓を引くことだけだ。
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