はぐれ星に夜が来る

縞間かおる

第1話 はぐれ星のオレ

「じゃあ7セット! 30日までに間に合うか?」


「余裕です!」


「ハ!ハ!ハ! あと嫁に在庫のチェックリスト渡してあるんだろ? 後で注文入れとくよ」


「ありがとうございます」


「来年、斉藤ちゃんが嫁さん貰ったらご祝儀でいっぱい注文出すからよ!」


「えっ?!」


「山口君から聞いたよ!お見合いしたんだろ?」


「あ、山口課長から……」


 確かに山口課長の知人を介して先月お見合いをした。


 けれども先方から「早くにご両親を亡くされてでの生活が長かった方とは家風が合わない」と断られてしまったのだ。


 山口課長はそれを聞いてひどく憤慨し、僕が却って課長をなだめてしまったくらいだった。


 だって本当は……僕は“人”が苦手だ。

 

 僕は自分の置かれた環境の中で……“生きてゆく術”として、“空気”や顔色を読む事を連綿とやっているだけだ。

 

 それは透明な……ガラスの様な壁を作って自分の周りを取り囲んでいる様なもので

 聡明な“お見合い相手”は、そんな僕の性質たちを見抜いてしまったのだろう。

 

 まあ、『伊勢屋』さんにはそんな事は言えないから

「まだ奨学金も全然返しきれてないし、きっと生活レベルが合わないと思われたんです」と言い訳したら

「ウチの坊主が女の子だったら立候補させるのに!」と残念がっていただけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る